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紙中心の業務を自動化してムダ時間を減らす進め方を現場向けにやさしく解説する完全ガイド

紙の申請書、請求書、回覧、押印…。こうした「紙が前提」の仕事は、転記ミスの手直しや承認待ちが積み重なり、気づけば毎月かなりの時間を奪います。ただ、いきなり大きく変えると現場が混乱しがちです。

そこでこの記事では、紙中心の仕事をムリなくデジタルへ移し、少しずつ自動で回る状態に近づける手順を説明します。読み終えたら「まず何から始めればいいか」「社内にどう説明すればいいか」が見えて、次の行動に移れるようになります。

現状整理|紙が残る理由をほどいて、優先順位を決める

紙の仕事を減らすときに一番やりがちなのが、ツールの話から入ってしまうことです。けれど本当は、どの紙がどこで止まり、誰が困っているかが見えないと、導入しても「結局ここだけ紙のまま」となりがちです。

まずは現状を軽く整理し、効果が出やすい順に着手するのが近道です。

棚卸しのやり方

最初はA4一枚のメモで十分です。紙の書類を種類ごとに書き出し、ひとつずつ次の点をメモします。

1. いつ発生するか
2. 誰が書くか
3. 誰が確認するか
4. どこに保管するか

例えば経費精算なら、申請者→上長→経理→保管、のように矢印でつなげるだけでOKです。こうして流れを描くと、承認が特定の人に集中している場所、押印のためだけに止まっている場所、紙を探し回っている場所が見えてきます。

ここで大切なのは、完璧な業務フロー図を作ることではありません。現場の人が見て「だいたいこんな感じ」とうなずけるレベルで十分です。むしろ、細かく作り込みすぎると「それ違う」「例外がある」と議論が発散しがちなので、まずはざっくりで進めます。

加えて、棚卸しのときは「その紙がないと困る理由」も一言で書いておくと後が楽です。例えば「監査に必要」「取引先から紙指定」「社内ルールが昔のまま」など。理由が「取引先指定」なら代替手段の相談が必要ですし、「社内ルールが昔のまま」ならルール改定が近道です。

ここまで書けると、関係者との話し合いがスムーズになります。現状が見えるだけで、改善の会話がスタートします。

狙い目の見つけ方

自動化で成果が出やすいのは、同じ情報を何度も扱っているところです。特に次のような作業は、紙が原因でムダが増えがちです。

  • 紙からExcelや別システムへ手入力している
  • 同じ内容を別の台帳にも書いている(二重管理)
  • 回覧や押印で机の上に止まっている(待ち時間が長い)
  • 保管場所がバラバラで探している(探す時間が読めない)

この中でも「待ち時間」は、作業していないのに時間が過ぎるので改善効果が体感しやすいです。また「転記」はミスが起きやすく、修正連絡や確認作業まで連鎖します。

候補を決めるときは、回数と時間の掛け算でざっくり見積もりましょう。例えば「月200回×5分」で月1000分です。さらに、差し戻しや確認の電話が多い業務は、数字以上に負担が大きいこともあります。

棚卸しメモを見ながら、ムダが出ている箇所に赤丸を付け、赤丸が多い順に優先順位を付けるだけでも十分な第一歩です。可能ならミス件数もメモすると、改善後の比較が楽です。

全体像:デジタル化→申請・承認→連携の順でラクになる

紙を減らす方法には段階があります。スキャンしてPDFにするだけでも探しやすくなりますが、承認や入力が紙のままだと、手間が残って「思ったより変わらない」と感じやすいです。

おすすめは、まず探せる状態を作り、次に申請と承認をオンライン寄りにし、最後に転記を減らすための連携へ進むことです。

デジタル化のコツ

スキャンしてPDFを保存するだけだと、ファイルが増えたときにまた探せなくなります。だから、最初に簡単なルールを決めます

例えば、ファイル名は「日付+取引先+書類種別」にする、保存先フォルダを部署で統一する、原本の保管期限を決める、などです。ここは難しい規程ではなく、現場が続けられるシンプルさが大事です。

加えて、紙の文字を読み取ってテキスト化できれば、書類の中身でも検索しやすくなります。ただし読み取り精度は、帳票の形式や印字の状態で変わります。手書きが多い、薄い印字、フォーマットがバラバラ、写真が斜め、などが重なると精度が落ちやすいので、最初は定型で効果が出やすい書類から始めるのが現実的です。

また、原本をどう扱うかも先に決めておくと混乱しません。「原本は月末にまとめて保管」「重要書類だけ施錠棚へ」など、現場が回る運用を選びましょう。「一定期間は原本保管」「重要書類だけ原本保管」のように段階を作ると、現場の不安が減ります。

スキャン担当や実施タイミング(毎日、週1など)を決めておくと、途中で止まりにくくなります。スキャンは「紙をゼロにする最終ゴール」というより、移行期の負担を減らす土台だと考えると失敗しにくいです。

申請と承認を変える

紙の回覧は、回す人が忙しいと止まります。ここを変えるには、申請をフォームで受け、承認ルートを決め、通知で回す仕組みが必要です。

例えば経費精算なら、入力項目をそろえ、領収書は写真で添付できるようにします。承認者はスマホでも確認できるようにするとスピードが上がります。差し戻しがある場合も、どこがNGかがコメントで残り、同じミスが減ります。

導入時にありがちな失敗は、項目を増やしすぎて入力が面倒になり、結局紙に戻ることです。まずは「最低限これがあれば処理できる」を基準にして、足りなければ後から増やす方がうまくいきます。

もう一つのコツは、承認ルートを複雑にしすぎないことです。最初は「上長→経理」などシンプルにし、例外は備考や追加承認で対応します。処理の流れが見える化されると、誰のところで止まっているかも分かり、改善が回しやすくなります。

例えば「承認が遅れたら自動でリマインド」「一定日数で代理承認へ切り替え」など、止まりにくい工夫も追加できます。入力画面に「記入例」を出したり、添付の必須ルールを決めたりすると、差し戻しの回数が減って現場がさらにラクになります。申請者側も迷いにくくなり、入力の手戻りが減ります。

連携で転記を減らす

フォーム化ができても、最後に会計ソフトや販売管理へ手入力していると、手間もミスも残ります。ここで考えたいのが連携です。いきなり完全自動を狙う必要はなく、まずは「転記の回数を一回減らす」だけでも十分価値があります

例えば、申請データをCSVで出せるようにして会計側で取り込む、取引先名や部門をマスタ化して表記ゆれを減らす、承認されたら担当者へ自動で通知を飛ばす、といった形です。

連携は現場の運用に深く関わるので、最初は小さく試し、うまく回ったら範囲を広げるのが安全です。

注意点として、連携は「例外が起きたときの戻し方」まで決めると安心です。エラーが出たら誰が見るのか、どこで止めるのか、手で直すときの手順は何か。ここまで決めておくと、連携が止まっても業務が止まりにくくなります。

導入ステップ:小さく試して、直して、横に広げる

紙の仕事は慣習が強いので、いきなり全社一斉に変えると反発が起きがちです。うまくいく会社は、試し運用で改善し、効果を数字で示して横展開します。

題材の選び方と例外処理

最初の題材は、全社が止まる業務ではなく、部署内で完結する申請や点検記録などが安心です。ここで成功体験を作ると「意外とラクだった」が社内に広がり、協力が得やすくなります。

題材を選ぶときは、次のどれかを満たすと進めやすいです。

1. 関係者が少ない(調整が少ない)
2. ルールが単純(例外が少ない)
3. 紙に戻せる(試し運用の安心感がある)

この条件を満たす題材は、最初の成功体験を作りやすいです。迷ったら、まずは月に数回発生する業務でも構いません。

一方で、自動化で止まりやすいのが例外処理です。例えば経費精算なら「領収書が出ない」「海外通貨」「複数部門にまたがる」「立替の人が退職した」など、必ずイレギュラーがあります。ここを無視すると本番で詰まり「やっぱり紙がいい」と戻りがちです。

対策は、現場の人に「いつも困るパターン」を聞いて、逃げ道を用意することです。例外は別の申請に分ける、備考欄を作って後で確認できるようにする、運用ルールとして手順を書いておく。最初から全部を自動で解決しなくて大丈夫です。

「困ったらこの手順」と決めておけば、例外が出ても慌てずに回せます。完璧より、止まらない設計を優先すると、導入が前に進みます。

試し運用→本番の進め方

テスト運用では「入力が面倒」「項目の意味がわからない」「誰が承認するの?」といった声が必ず出ます。これは失敗ではなく改善の材料です。テスト期間を短く区切り、出た意見をまとめて入力項目や承認ルートを調整します。

本番に入る前に決めたいのは、次の三つです。

1. 入力ルール
2. 権限
3. 問い合わせ先

入力ルールが曖昧だとデータがバラバラになって集計できません。権限が広すぎると勝手に編集され、狭すぎると処理が止まります。問い合わせ先がないと、困った人が紙に戻ります。

さらに、効果測定もセットにします。例えば「処理時間」「承認までの日数」「差し戻し件数」を導入前後で比べるだけでも、成果が見えます。数字が出ると、次の業務へ横展開するときの説得材料になります。

うまくいったら「次はどの紙を減らすか」を同じ手順で繰り返すだけです。こうして改善が回り始めると、紙が減るスピードも上がっていきます。同時に、現場の声を拾う窓口を残しておくと、運用が硬直せず、自然に定着していきます。

ツール選びと失敗回避

ツールは万能ではなく、得意分野が違います。紙の文字をデータにしたいのか、申請と承認の流れを整えたいのか、転記を減らしたいのか。目的がはっきりすると選びやすくなります。

ツールの考え方

紙の文字をデータ化するならOCRが便利ですが、精度は帳票次第です。定型で印字がはっきりしている書類は安定しやすい一方、手書きや写真のブレが多いと確認作業が必要になります。ここは「完全自動」を期待しすぎないのがコツです。

パソコンの定型操作を自動で回したいならRPAが相性良いですが、画面が変わると止まることもあります。だから、変化の少ない作業から始め、止まったときの対応(誰が直すか、どこを確認するか)まで決めておくと安心です。

そして、申請や台帳そのものを置き換えるなら、業務アプリで入口から変えるのが近道です。例えばkintoneのようなノーコード基盤なら、現場でも画面を作りやすく、運用しながら改善しやすいのがメリットです。将来的に「別の紙業務も同じ考え方で置き換える」なら、土台として価値が出やすいです。

申請の回覧が主な悩みなら、ワークフロー機能が強い仕組みを優先すると分かりやすいです。

大事なのは「どれが最強か」ではなく、「今の困りごとに合う役割」を選ぶこと。まずは一つの業務で小さく試し、必要なら組み合わせていく発想が現実的です。「紙を読む」「回す」「転記する」を分解して考えると、選択肢がスッと整理できます。

失敗の防ぎ方

よくある失敗は、スキャンだけで満足してしまい、回覧待ちや転記が残って「仕事が減った感じがしない」状態です。スキャンは土台として有効ですが、その次に申請と承認の仕組みへつなげる前提で進めると効果が積み上がります。

もう一つの落とし穴は、入力のルール不足です。取引先名が「株式会社A」「(株)A」「A社」で混在する、日付の書き方が揃わない、品目が自由入力で表記ゆれだらけ、などが起きると、集計や検索ができず、結局手直しが増えます。

回避策は、次のような最低限の統一です。

  • 取引先や部門は選択式にする
  • 必須項目を決める
  • 入力例を画面に書く
  • 権限を分けて勝手に項目を変えられないようにする

さらに上司が気にする安全面も、紙よりデジタルの方が管理しやすい場合があります。閲覧できる人を絞り、履歴を残せば「誰が見たか」が追えます。持ち出しや共有のルール(スマホで見られる範囲、社外への送付方法など)も、最初に決めておくと安心です。

迷ったら、伴走ナビの無料相談で現状整理から一緒に進めるのも一つの手です。比較検討の材料がほしい場合は資料請求も活用できます。

社内で通すコツ

自動化は「便利そう」だけでは前に進みにくく、上司や他部署はリスクや費用が気になります。ここで大事なのは、難しい言葉ではなく、現場の困りごとを数字と具体例で説明することです。

さらに、最初は小さく試して「うまくいった実績」を作ると、次の業務に広げやすくなります。

社内説明のコツ

説明は、熱意よりも「どれだけ楽になるか」が伝わると通りやすいです。おすすめは、回数×時間でざっくり効果を出し、現場の具体例を添えるやり方です。

例えば「月200回の転記があり、1回5分なので月1000分。フォーム化で半分にできれば月500分浮く」のように言うと、イメージが一気に具体的になります。さらに、差し戻しが減る、承認が早くなる、検索が速くなる、といった「時間以外のメリット」も一言入れると説得力が増します。

資料は立派でなくてOKで、A4一枚に次の内容を書けば十分です。

1. 対象業務
2. 現状の困りごと
3. 改善後の流れ
4. 効果見込み

最後に「最初は部署内で試し、問題があれば元に戻せる形でやる」と添えると、過度な不安を減らせます。試し運用は2週間など短く区切り、結果だけ共有すると、話が前に進みやすいです。

例えば「入力にかかった平均時間」「承認までの日数」「差し戻し件数」を3点だけ比べると、誰でも効果を理解できます。あとは、現場の代表者に一度触ってもらい「ここが面倒」「ここは助かる」を集めるだけで十分です。

反対意見が出ても、試し運用なら調整しやすいです。この一手で合意形成がグッと進み、不安も減ります。

費用と運用の考え方

費用はツール代だけでなく、設定や運用ルール作り、教育の時間もコストになります。だから最初は、機能を盛り過ぎず「処理が回る最低限」から始める方が、結果的に安く済みます。

運用面では、入力ルール、権限、問い合わせ先を先に決め、困ったときの手順を短く残しておくと定着しやすいです。

安全面も紙の方が有利とは限りません。紙は置き忘れやコピーの管理が難しく、誰が見たかも追えません。デジタルなら、閲覧できる人を絞り、履歴を残し、保管期限も設定できます

社内で不安が強いときは、伴走ナビの資料請求で比較材料を揃えたり、無料相談で「どこまでを最小構成にするか」を一緒に整理するのがおすすめです。

まとめ

紙の仕事をラクにする近道は、まず書類と流れを棚卸しして、転記や回覧待ちなどムダが多い場所を見つけることです。そのうえで、デジタル化で探す時間を減らし、申請と承認の仕組みを整え、必要に応じて連携や自動処理を足していくと失敗しにくくなります。

最初から完璧を目指さず、関係者が少ない業務で小さく成功させ、効果を数字で示して横展開するのが王道です。

もし「どこから手を付けるべきか」「社内にどう説明すればいいか」で止まりそうなら、伴走ナビの無料相談で整理から始めてみてください。社内共有には資料請求も便利です。

伴走ナビ管理人
サイボウズパートナーのペパコミ株式会社で年間100社以上のkintone構築と伴走サポートの案件に携わり、kintoneだけでなくプラグイン設定も数多く経験。システム機能だけではなく、社内業務コンサルとしての目線で中小企業のDX化を推進しています。
       

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