社内の承認を自動で回す方法:稟議・経費が止まらない設計とツール選定ガイド

「承認待ちで仕事が進まない」「あの申請、いま誰のところ?が毎回起きる」――そんなモヤモヤ、ありますよね。社内の申請や稟議は、担当者が悪いというより、流れとルールがあいまいで止まりやすい形になっていることがほとんどです。
この記事では、社内の承認をスムーズに回すために、どこが詰まりやすいのかを見つけ、止まらない流れを設計し、ツール選びと社内定着までをやさしく解説します。読了後に「まず何から着手するか」がハッキリするように進めます。
目次
承認が遅い原因を先に潰す

承認の流れを自動化したいとき、いきなりツールを選ぶと失敗しがちです。先に「どこで止まっているか」を見つけて、止まり方に合わせた対策を入れると成功率が一気に上がります。
誰待ちが起きる理由と見える化
承認が遅い一番の原因は「誰が次なのか分からない」「気づかれていない」の二つが重なって起きることです。メールで申請を回していると、CC漏れや見落としが起きますし、紙だとそもそも机の上で止まります。ここで大事なのは、犯人探しではなく、止まる構造を消すことです。
まずやるべきは、申請が通るまでの登場人物を、申請者・一次承認者・二次承認者・最終決裁・経理(または管理)などに分けて書き出すこと。次に「今はどこにあるか」が一目で分かる状態を作ります。例えば、申請の状態を「作成中」「承認待ち」「差し戻し」「完了」のように区切り、今どの状態かが画面で見えるだけでも体感は大きく変わります。
さらに効くのが通知です。承認依頼が来たらすぐ通知、一定時間反応がなければリマインド、期限を超えたら上長にも通知、と段階を作ると止まりにくくなります。ポイントは、通知を増やしすぎないこと。最初は「承認依頼」と「期限前の一回」くらいから始めると、反発が少なく定着しやすいです。
差し戻しが多い会社の共通点
差し戻しが多いと、申請者も承認者も疲れてしまい「結局メールで口頭確認」が増えて、どんどん泥沼になります。差し戻しが増える理由は、だいたい次のどれかです。
- 申請フォームに必要情報が足りない
- 書き方が人によってバラバラで判断しづらい
- 添付(見積もりや証憑など)のルールが決まっていない
ここでの解決策はシンプルで、「判断に必要な情報」を先に揃える設計にすることです。例えば経費なら、金額・用途・支払先・勘定科目の候補・領収書の有無、購買なら、見積もり・納期・発注先・比較理由など、承認者が確認するポイントを逆算します。
また、自由入力が多いほどブレます。可能なら選択式に寄せましょう。例えば「用途」は選択肢を用意し、「その他」を最後に置く。金額は数値入力にして桁間違いを減らす。添付は「必須」と「任意」を分け、必須の理由も一行添える。こうした小さな工夫で、差し戻しは目に見えて減ります。差し戻しゼロを目指すより、差し戻しの理由が毎回同じにならない状態を先に作るのが現実的です。
ルールがあいまいで止まるパターン
承認が止まる会社ほど「人によって判断基準が違う」「部署ごとに承認ルートが違う」「例外が多くて毎回相談」が起きています。ここで勘違いしやすいのが、ツールを入れれば勝手に整う、という発想です。実際は逆で、流れを自動化するほど、ルールのあいまいさが表に出ます。
例えば「この金額なら部長まで」「この費目なら経理確認」「取引先が新規なら反社チェック」など、分岐条件が口頭だと、担当者の頭の中でしか動きません。これを仕組みに落とすには、ルールを文章化して合意する必要があります。難しく考える必要はなく、最初は「よくあるケース」だけ決めればOKです。
おすすめは、ルールを三段階に分けることです。通常ルール、例外ルール、緊急時ルール。緊急時だけは後追い承認を認めるなど、逃げ道を用意しておくと現場は回りやすくなります。あいまいなまま自動化すると、結局「確認が必要」で止まるので、ここを先に整えるのが近道です。
止まらない流れの設計手順

ここからは、社内の承認を自動で回すための「作り方」を順番に説明します。ポイントは、完璧を狙わず、まず一つの申請から小さく成功させることです。設計の流れが分かれば、ツールを選ぶときも「何が必要か」が見えて、無駄な買い物を避けられます。
現状を一枚にして棚卸し
最初にやるのは、現状の流れを一枚に描くことです。難しい図は不要で、紙でもホワイトボードでもOKです。申請の種類を一つ決めて(例えば経費、購買、稟議のどれか)、申請から完了までを左から右に並べます。そのとき「情報が流れる場所」も書きます。メール、紙、チャット、共有フォルダ、会計ソフトなどです。
次に、止まる場所に印をつけます。例えば「部長が忙しくて止まる」「経理で差し戻しが多い」「添付がない」「金額が大きいとルートが変わる」など、現場の声をそのままメモします。ここで大切なのは、理想ではなく現実を書くこと。建前のフローを描くと、あとで導入しても回りません。
棚卸しの最後に、申請者・承認者・管理側で「困っていること」を一つずつ出します。申請者は入力が面倒、承認者は判断材料が足りない、管理側は履歴が追えない、などが典型です。この三者の困りごとが重なるところが改善ポイントです。ここを押さえると「自動化したけど使われない」を避けられます。
承認ルートと分岐を決める
次に決めるのが「誰に回るか」と「どの条件で分かれるか」です。ここで言う分岐は、例えば金額、費目、部署、取引先の種別(新規かどうか)などです。初心者がやりがちなのは、いきなり細かく作り込みすぎること。細かいほど例外が増えて破綻します。
まずは、八割の通常ケースだけを対象にします。例えば「10万円未満は課長まで」「10万円以上は部長まで」「新規取引先は経理と法務も確認」くらいの粒度で十分です。残りの二割は例外ルートに逃がす設計にしておくと、現場は止まりません。
もう一つ重要なのが、代理承認です。承認者が休みのときに止まると、結局「紙でハンコ」が復活します。代理を決める方法は、役職で代理を決める、部署で代理者を固定する、本人が不在設定できる、などがあります。最初は固定代理でもOKです。分岐は少なく、代理は必ず用意。これが止まらない設計の基本です。
例外と差し戻しを設計する
現場で本当に詰まるのは例外です。例えば「急ぎで今日中に発注したい」「領収書が後日になる」「部署横断で承認者が変わる」など、どの会社にも必ず起きます。例外を無理に通常ルートへ押し込むと、承認者が迷って止まります。
そこでおすすめなのが、例外を受け止める入口を用意することです。例えば申請フォームに「例外フラグ」を置き、理由の入力を必須にします。例外フラグが立ったら、承認ルートを一段上に上げる、または管理側へ確認が飛ぶようにします。これなら「例外だから口頭で」にならず、履歴も残ります。
差し戻しも同様です。差し戻すときに、理由を選択式にすると改善が回ります。「添付不足」「用途が不明」「金額の根拠が不足」など、よくある理由を選べるようにしておけば、どの差し戻しが多いかが見えて、フォーム改善に繋がります。例外と差し戻しは、減らすより見える化して改善できる形にするのがコツです。
ツール選びで失敗しないポイント

ここでは、社内の承認を回す仕組みを作るときのツール選びを解説します。大事なのは「有名だから」「機能が多いから」ではなく、自社の運用に合うかどうか。特に初心者ほど、現場が使いやすいか、あとから修正できるかを重視した方が失敗しにくいです。
最初に確認する必須機能
ツールを比較するときは、まず必須条件を揃えましょう。候補を広げる前に、最低限ここだけは押さえると失敗が減ります。
- 通知:承認依頼とリマインドができる
- 状態管理:いま誰待ちかが分かる
- 履歴:いつ誰が承認したかが残る
- 権限:見える人、編集できる人を分けられる
- スマホ対応:外出中でも承認できる
この五つが揃っていれば、承認スピードと透明性はかなり改善します。加えて、将来の拡張を考えるなら、会計や人事など他システムとの連携のしやすさも確認しておくと安心です。連携は難しく聞こえますが、要は「二重入力を減らせるか」です。二重入力が残ると、現場の不満が増えて定着しにくくなります。
注意点として、機能が多すぎると使い方が難しく感じられます。リテラシーが高くない組織ほど、画面がシンプルで迷いにくいものを優先するとスムーズです。
柔軟に作り替えたいなら業務アプリ型
社内の承認を回す仕組みは、一度作って終わりではなく、運用しながら必ず改善が入ります。例えば「入力項目を減らしたい」「分岐条件を追加したい」「新しい申請種類を増やしたい」などです。こうした改善を早く回したい場合は、業務アプリを作れるタイプが向いています。
特にkintoneのように、データをためる場所(申請内容)と、状態を進める仕組み(承認ステップ)を組み合わせられると、現場の変化に合わせて直しやすいです。例えば「購買申請アプリ」「経費申請アプリ」のように分けて作り、共通項目だけ揃える、といった設計ができます。
また、内製化(社内で改善できる状態)を目指すなら、現場に近い人が触れることが大切です。難しい開発が必要だと、ちょっとした修正でも外注待ちになり、改善が止まります。伴走ナビでは、kintone活用の事例をベースに、現場の声を反映しながら「直せる仕組み」を一緒に作る支援もできます。最初から完璧ではなく、改善できる形で始めるのが成功の近道です。
統制を強めたいなら専用ワークフロー型
一方で、全社統一のルールを強く効かせたい、監査や内部統制の要件が厳しい、申請種類が非常に多い、といったケースでは、ワークフロー専用の製品が向くことがあります。専用型は、承認の証跡や権限制御が強い設計になっていることが多く、管理側の安心感は大きいです。
ただし、自由度が高いほど設定が難しくなったり、運用ルールが固まりすぎて現場が窮屈に感じたりすることもあります。導入前に「何を守りたいのか」をはっきりさせておくと選びやすいです。例えば、守りたいのが「履歴の一元管理」なのか、「承認ルートの統一」なのか、「証憑の保存」なのかで、必要な機能は変わります。
また、専用型でも結局は運用設計が必要です。承認ルートの例外や代理承認、差し戻し理由の整理などは、どのツールでも避けられません。ツールは魔法の杖ではなく、仕組みを回すための土台だと考えると、導入後のギャップが減ります。
社内に定着させて形骸化を防ぐ

仕組みを作っても、使われなければ意味がありません。定着で大事なのは、現場の負担を増やさず、メリットをすぐ感じてもらうことです。ここでは、導入時によくある反発を減らし、運用が回る状態を作るコツをまとめます。
説明で反発を減らす伝え方
新しい承認の仕組みを入れると、現場から「入力が増えるんじゃない?」「結局面倒になるんでしょ?」と言われがちです。ここで真正面から正論をぶつけると逆効果です。おすすめは、現場メリットと管理メリットをセットで伝えること。
例えば現場メリットは、「誰待ちが見える」「差し戻しが減る」「スマホで承認できる」「探し物が減る」。管理メリットは、「履歴が残る」「ルールが揃う」「抜け漏れが減る」。この両方を短い言葉で示します。
そして最重要なのは、最初の対象を絞ることです。「全社で一気に」ではなく、「まず経費だけ」「まず購買だけ」と宣言し、改善しながら広げると安心感が出ます。導入説明は長くするより、実際の画面を見せて「ここを押せば申請できる」「ここで今の状況が分かる」と具体で伝える方が刺さります。初回で全員を納得させるより、使って便利を感じてもらうのが勝ち筋です。
権限と情報管理の基本
承認の申請には、金額、取引先、契約条件など、社内でも見せたくない情報が入ることがあります。だからこそ、権限設計は最初に押さえたいポイントです。難しく考えずに、まずは次の三つを分けましょう。
1. 閲覧できる人:申請者、承認者、必要な管理者だけ
2. 編集できる人:申請者(承認中は制限することも)
3. 承認できる人:役職や担当で決めた承認者
ここを曖昧にすると「勝手に見られるのが怖い」「勝手に直される」と不信感が出て、使われなくなります。異動や退職で担当が変わることも考えて、個人名で固定しすぎないのもコツです。役職や部署単位で設定できるなら、その方が運用は楽になります。
また、申請のデータ保管も重要です。承認が終わった申請をどこに残すのか、添付ファイルはどこに保存するのか、検索できるのか。ここが整うと、監査対応だけでなく、日々の「過去の稟議どこ?」が減って、現場の満足度が上がります。
小さく始めて全社へ広げる手順
成功の定番ルートは、まず一つの申請で回し、改善し、横展開です。おすすめの進め方は次の流れです。
1. 対象を一つに絞る(例:経費精算、購買申請など)
2. 二週間から一か月、試運転する
3. 差し戻し理由や止まり箇所を見て改善する
4. 次の申請種類へ広げる
このやり方だと、現場の声を取り込みながら形を作れるので、反発が減ります。試運転の間は「困ったらここに聞けばいい」窓口を決めておくと安心です。窓口がないと、現場は勝手に旧運用へ戻ります。
伴走ナビでは、こうした試運転の進め方も含めて、事例をもとに「どこから始めると早いか」「どこで詰まりやすいか」を一緒に整理し、社内で改善を回せる状態(DXの内製化)を目指す支援ができます。自社だけで抱え込まず、外からの視点を入れると、意外とスッと前に進みます。
まとめ|まず一つの申請から「止まらない形」を作ろう
社内の承認を自動で回す取り組みは、ツール選びより先に「止まる原因の特定」と「ルールの見える化」が効きます。誰待ちを見えるようにし、差し戻しが起きにくい入力設計にして、分岐と代理、例外の入口まで用意できれば、承認は驚くほどスムーズになります。
いきなり全社で完璧を狙うより、まずは経費や購買など一つに絞って小さく成功させるのが近道です。そこで得た改善ポイントを横展開すると、反発も少なく、定着まで進みやすくなります。
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