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紙の仕事をムリなく減らす自動化の進め方:初心者でも迷わない手順とツール選び実践ガイド

紙の申請書、回覧、押印、ファイル保管、そして同じ内容の転記……。こうした作業は「慣れているから回っている」ように見えて、実は探す・待つ・確認するが積み重なり、静かに時間を奪っていきます。しかもミスが起きると、直すためにさらに紙が増えるという負のループになりがちです。

この記事では、ITが得意ではない方でも置いていかれないように、紙中心の仕事をラクにする進め方を、順番どおりに説明します。いきなり全部を変えるのではなく、まず「ムダが多いところ」から小さく始めて、自然に広げるやり方です。

紙が減らない理由とゴール設定

紙が残るのは「紙が好きだから」ではなく、紙の周りにある作業が複雑だからです。特に、誰がどこまで進めたか見えない回覧、同じ情報の二重入力、過去書類の探索が重なると、現場のしんどさは一気に増えます。

ここでは、まず「どこをラクにすれば効果が出るか」を具体的にイメージし、ゴールを決めます。ゴールが曖昧だと、便利そうなツールを入れても使われず終わりやすいので、最初の整理がとても大事です。

ムダは探す・待つ・転記・保管

紙の仕事で本当に時間を食っているのは、書く行為そのものより「周辺作業」です。例えば、申請書がどこにあるかわからず探す、承認者の机の上で止まって待つ、紙の内容をシステムや表に入力し直す、終わった書類をファイルに綴じて棚に戻す……こうした動きが一つひとつは数分でも、毎日積み重なると大きなロスになります。

さらに厄介なのが「確認のための確認」です。紙だと最新版がどれかわかりにくく、同じ内容を別の人が別の用紙に書き写して、結果として数字がズレることも起こります。

まずは自分の職場で、次のどれが多いかを思い出してみてください。

  • 探す:過去の書類、添付資料、承認済みかどうか
  • 待つ:回覧が戻らない、差戻しの連絡が遅い
  • 転記:紙からExcelやシステムへ入力、同じ項目の二重入力
  • 保管:ファイル作成、棚管理、監査のたびに掘り起こし

この四つのどれかが多い職場ほど、紙中心を少し変えるだけで体感が変わりやすいです。逆に言うと、ここを見ずに「とにかく電子化しよう」とすると、スキャン作業が増えて疲れるだけになることもあります。

自動化の線引き

自動化というと「全部ボタン一つで終わる」イメージを持ちやすいですが、現実はもう少し地味です。うまくいくコツは、最初から完璧を狙わず、機械が得意な定型部分を任せ、人が判断する部分は残すことです。

例えば、決まった項目を入力して提出する申請は仕組みに乗せやすい一方、例外だらけのイレギュラー対応は、無理に自動化するとルールが崩れて現場が混乱しがちです。

線引きの目安は、次のように考えるとわかりやすいです。

定型
入力項目が決まっている、承認ルートがほぼ固定、頻度が高い

例外
案件ごとに項目が変わる、判断基準が人によって違う、頻度が低い

最初に狙うのは「定型」です。定型を仕組みにすると、例外が見えやすくなり、例外だけ人が丁寧に対応できるようになります。結果として全体の品質も上がります。自動化は魔法ではなく、仕事の形を整える作業でもあるので、まずは整えやすいところから始めるのが近道です。

ゴールは時間・ミス・見える化

紙の仕事を減らすプロジェクトが失速する理由の一つは、「何が良くなったのか」が共有できないことです。便利になった気はするけど、忙しさが減った実感がない。すると、途中で元に戻ってしまいます。

そこでおすすめなのが、ゴールを三つの観点で決めることです。

1.
時間:例えば「申請書の作成と回覧で一件あたり二十分かかっていたのを十分にする」など、ざっくりでも数で置くと会話が早くなります。
2.
ミス:「転記ミスが月に何件あるか」「差戻しが何回発生しているか」など、痛みが見えると優先順位が決めやすいです。
3.
見える化:これは「今どこで止まっているかがわかる」「誰が処理中かが追える」など、体感に直結します。

この三つを揃えると、ツール選びもブレにくくなります。時間短縮が最優先なら入力と連携が強い仕組み、ミス削減が最優先なら転記をなくす仕組み、見える化が最優先なら一覧と進捗管理が強い仕組み、という具合に方向が定まります。

現状整理と優先順位

紙中心の仕事をラクにするとき、いきなりツールを触るより先に「どの紙がどれだけ面倒か」を整理するのが勝ちパターンです。現状が見えると、ムダが多いところから着手でき、少ない努力で大きな効果が出ます。ここでは、初心者でもできる棚卸しのやり方と、優先順位の付け方を説明します。

紙の流れを書き出す

棚卸しというと難しそうですが、やることはシンプルです。対象の紙を一枚選び、その紙が動く道順を、会話できるレベルで書き出します。ポイントは、作業名ではなく「人と行動」で書くことです。

例えば「経費精算」ではなく、「Aさんが領収書を貼り、Bさんが金額を確認し、Cさんが承認印を押し、総務が台帳へ転記する」という形にします。こうすると、どこで止まりやすいか、どこでミスが出やすいかが見えてきます。

書き出すときは、次の四つを入れると抜けが減ります。

  • 誰が:担当者、承認者、保管担当
  • いつ:締め日、提出タイミング、月次か都度か
  • 何を:書類の種類、添付資料、入力項目
  • どこへ:回覧先、保管場所、転記先のシステム

ここまで整理できたら、紙そのものより「転記」「回覧」「問い合わせ対応」が重いことが多いと気づくはずです。まずは紙を減らす前に、この流れを見える形にするだけでも、改善ポイントが自然に浮かびます。

自動化のために先に標準化する

自動化でつまずく典型が「ルールが人によって違う」状態です。紙だと、その場の判断で何となく回ってしまうので、違いが放置されがちです。しかし仕組みに乗せようとすると、「どっちのルールが正しいの?」で止まります。だからこそ、先に標準化が必要です。

標準化というと堅く聞こえますが、全部を完璧に揃える必要はありません。最低限、次の三つを揃えると動きやすいです。

1.
書き方:項目名、必須入力、日付や金額の書式
2.
承認:誰が承認するか、差戻し時の戻し先
3.
例外:金額が大きいとき、急ぎのとき、代理承認の扱い

例外は「全部想定する」ではなく、「よくある例外だけ決める」が現実的です。例えば、出張精算で領収書がない場合の扱い、承認者が不在のときの代理ルールなど、頻度が高いものに絞ります。標準化ができると、後で入力フォームやワークフローに落とすのが簡単になり、現場も「迷わなくてラク」と感じやすくなります。

優先順位は頻度×時間×ミス×影響

改善のネタが見つかると、次に起きるのが「どれからやる?」問題です。ここで声の大きい人の案件から着手すると、効果が薄くて盛り上がらず、プロジェクトが止まりやすくなります。

揉めにくく、成果が出やすい決め方としておすすめなのが、四つの軸で点検する方法です。

  • 頻度:毎日なのか、月一なのか
  • 時間:一件あたり何分かかるのか
  • ミス:間違いが起きるとどれだけ手戻りするのか
  • 影響:遅れると現場やお客さまにどれだけ影響があるのか

例えば、毎日発生して転記が多い受付票は優先度が上がりやすいです。逆に、年に数回しか使わない特殊書類は後回しでOKです。ここを数字でざっくり置くと、「この書類を先にやると月に何時間浮く」が説明でき、社内の納得も取りやすくなります。

伴走ナビでも、改善の相談ではまずこの整理から入り、効果が出やすいテーマを一緒に選びます。いきなり大がかりな導入に行かないからこそ、現場の負担を増やさずに前進しやすいのが強みです。

電子化とスキャン運用

紙をラクにする一番の近道は、「紙をゼロにする!」と気合で始めることではありません。おすすめは、紙が発生する入口を減らしつつ、どうしても紙が出るならすぐデータ化して探さなくて済む状態にすることです。ここを整えるだけで「ファイルの山」「あの書類どこ?」がかなり減ります。

書く場所を変える

紙がなくならない職場では、「紙に書くこと」が目的化してしまっていることがよくあります。でも本当の目的は、申請や報告の情報を集めて、承認や処理を進めることですよね。ならば”書く場所”を紙から別の場所に移すだけで、一気にラクになります。

特に初心者の方におすすめなのは、いきなり難しい仕組みを作るのではなく、まず次のどれか一つを置き換えることです。

  • 申請書:紙→入力フォーム(必須項目や選択肢を用意して迷いを減らす)
  • 社内回覧:紙→共有の申請一覧(今どこで止まっているか見える)
  • 定型書類:紙→テンプレート(書く項目を固定して転記を減らす)

ここで大事なのは「完璧にしない」ことです。最初から例外を全部潰そうとすると、ルールが複雑になって現場が疲れます。まずは頻度が高いものだけ、入力項目を絞ってフォーム化し、足りない部分は備考欄で逃がす。これだけでも「書き忘れ」「読み間違い」が減り、処理する側もラクになります。

伴走ナビでも、最初は”入口”から整えるケースが多いです。入口が整うと、その先の自動化(承認・転記・集計)がつながりやすくなるからです。

スキャンは保存ルールが先

スキャン自体は、正直だれでもできます。つまずくのは、その後です。スキャンしたファイルが「デスクトップのどこか」「担当者ごとのフォルダ」に散らばると、紙が棚からパソコンの中に移動しただけで、探す地獄は終わりません。だから、スキャンを始める前に”最低限のルール”だけ決めておくのがコツです。

おすすめのルールはシンプルでOKです。例えば次のように「探せる」形を最優先にします。

1.
命名:日付+書類名+相手先(例:2025-12-01_請求書_〇〇商事)
2.
保管場所:部署共通の置き場を一つ決める(個人フォルダ禁止にする)
3.
検索:相手先名か案件名のどちらかは必ず入れる

さらに、意外と効くのが「スキャン担当を固定しない」ことです。担当を一人にすると、その人が休んだ日に止まります。そこで、スマホでも読み取れる運用にし、最低限の手順を短く共有します。例えば「撮る→名前を付ける→所定フォルダへ入れる」までを3分で終わる流れにしておくと、属人化しにくいです。

もし「紙も捨てたい」と考えるなら注意が必要です。税務書類などは、一定の要件を満たして保存するルールがあります。国税庁がスキャナ保存の考え方やQ&Aを公開しているので、対象書類がある場合は一度確認しておくと安心です。

税務書類は慎重に

「全部スキャンしたから紙は捨ててOK」と言い切れないのが、税務関係の書類です。ここを雑にやると、あとで監査や税務調査の場面で説明が大変になります。とはいえ、初心者の方がいきなり細かい条文を読む必要はありません。まずは考え方だけ押さえましょう。

ポイントは大きく二つです。

一つ目は「税金に関係する書類は、保存のルールが決まっている」ということ。領収書や請求書などの扱いは、電子で保存する場合の要件や、電子で受け取った取引データの保存など、制度として整理されています。国税庁の特設サイトやQ&Aが入口としてわかりやすいです。

二つ目は「全部を同じ運用にしない」ことです。社内メモや稟議の控えのように、法律より”社内の運用”が中心の書類もあれば、税務書類のようにルール確認が必要なものもあります。だから最初は、

税務書類(請求書・領収書など)
保存要件を確認しながら慎重に

社内書類(申請書・回覧など)
現場が回ることを最優先に簡素に

と、分けて進めるのが安全です。分けておけば、現場はスピード感を保ちつつ、必要なところだけ確実に守れます。ここができると「ペーパーレス=怖い」が薄れ、社内も前向きになりやすいです。

税務に関係する書類を電子で保存する場合は、国税庁がまとめている「電子帳簿等保存制度(いわゆる電帳法)」の特設サイトとQ&Aを一度確認しておくと安心です。特に、取引データを電子で受け取った場合の保存ルール(電子取引)や、スキャナ保存の考え方は、後から「これで大丈夫?」となりやすいポイントなので、最初に目を通しておくと手戻りを減らせます。

転記をなくす:OCR・フォーム・連携

紙のしんどさの中心は、実は紙そのものより「同じ内容を何度も入力すること」です。紙からExcelへ、Excelから会計ソフトへ、さらに別の台帳へ……。これを減らせると、時間もミスも一気に改善します。

OCRの向き不向き

OCRは、ざっくり言うと「紙の文字を読み取ってデータにする仕組み」です。聞こえは最高ですが、現場で失敗するのは”期待しすぎ”が原因になりがちです。OCRは特に、次の条件がそろうと強いです。

  • 文字がはっきりしている(印字、きれいな手書き)
  • レイアウトが固定(同じフォーマットの請求書、申込書など)
  • 読み取りたい項目が決まっている(会社名、金額、日付など)

逆に、手書きが崩れていたり、毎回フォーマットが違ったり、余白にメモが多い紙は苦手です。その場合は、OCRで100点を狙わず、「8割は機械、残り2割は人が確認」で設計すると現実的です。つまり、OCRは”入力をゼロにする道具”ではなく、入力を短くする道具として使うのがコツです。

もう一つのポイントは、読み取り後の確認方法です。OCRで取り込んだデータを、結局Excelに貼り付けて目視で見直すだけだと、思ったよりラクになりません。最初から「どこを人が確認するか」「間違いが起きやすい項目は何か(例えば金額)」を決めておくと、運用が安定します。

フォーム化で転記ゼロへ

紙からの転記を減らしたいなら、実はOCRより先にフォーム化を検討した方がうまくいくことが多いです。なぜなら、フォーム化すると”最初からデータで集まる”ので、紙を読み取る工程が消えるからです。

フォーム化のメリットは、ラクになるだけではありません。入力の品質が上がります。例えば、金額は数字しか入らないようにする、日付はカレンダーから選ぶ、必須項目は未入力だと送れないようにする。こうした仕掛けがあると、後工程の確認が減り、差戻しも減ります。現場の人にとっても「書き方を迷わない」のは大きな価値です。

フォーム化を始めるときは、次の順番が安全です。

1.
まずは”毎日か毎週出る”書類を一つだけ選ぶ
2.
入力項目を減らし、迷いやすいところだけ選択式にする
3.
紙と並行運用の期間を短く決める(ずるずる併用しない)

ここで「完璧なフォーム」を目指すと止まります。最初は、備考欄で逃げてOKです。運用してみると、本当に必要な項目と不要な項目が見えてくるので、後から整えた方が結果的に早いです。伴走ナビが得意な”内製化”の支援も、こうした小さな改善を積み重ねて現場に定着させるアプローチが中心です。

連携で二重入力を止める

二重入力が起きる理由は単純で、「データの置き場がバラバラ」だからです。申請は紙、集計はExcel、会計は別システム、承認状況はメール……。この状態だと、誰かがどこかで手入力してつなぐしかありません。

ただし、いきなり全部を統合するのは大変です。初心者の現場では、まず“つなぐ点”を一つに絞った方が成功します。例えば、申請データを一つの台帳に集めて、そこから必要なところに渡す形です。台帳が一つあるだけで、

  • 「今どこで止まっている?」が見える
  • 同じ情報を何度も聞かれなくなる
  • 集計が自動でできるようになる

といった効果が出やすくなります。ここで役立つのが、業務アプリで台帳を作れる仕組みです。例えばkintoneのように、入力フォームと一覧(台帳)をセットで作れると、「入力→一覧→承認→集計」がつながりやすく、現場でも扱いやすいです。

大事なのは、連携の目的を「全自動」にしないことです。最初は、転記が一番重いところだけを止める。そこが止まると、月末のバタバタが軽くなり、次の改善に取り組む余力が生まれます。結果として、少しずつ連携範囲を広げられます。

ワークフローで待ち時間を減らす

紙の回覧がつらい理由は、ハンコそのものより「どこで止まっているか分からない」ことにあります。人の机の上、郵送中、外出中……行方が見えないと、処理する側も依頼する側も落ち着きません。

ここでは、申請・承認・差戻しを”今の業務に近い形”で置き換えつつ、止まりにくい運用にするコツを説明します。いきなり大改革ではなく、まずは一つの申請から始めるのが安全です。

現場の言葉で設計する

ワークフロー化で失敗しやすいのは、いきなり「理想の業務」に寄せすぎることです。現場は忙しいので、いきなり操作やルールが大きく変わると「前の方が早い」となって戻りがちです。そこで最初は、紙でやっていた流れを、ほぼそのまま再現することを優先します。

例えば、申請書の項目は最初から全部きれいに整理せず、紙に書いていた項目を一旦そのまま入れてしまう。承認ルートも、部長承認、経理確認、最終承認のように、今の流れを変えない。差戻しも「差戻し理由を一言書いて戻す」だけを必須にし、細かい入力を増やしすぎない。こうすると、現場は「紙が画面に変わっただけ」に近い感覚で始められます。

一方で、仕組みに乗せるときに最低限決めておきたいこともあります。例えば、代理承認の条件、締め日の扱い、添付資料のルールです。ここが曖昧だと、差戻しが増えて逆に面倒になります。ただし、ここでも完璧を狙う必要はありません。頻度が高い例外だけ先に決めて、残りは運用してから追加する方が、結果的に早いです。

伴走ナビの支援でも、「まずは現場が迷わず回る形」を作ってから、少しずつ入力項目を整えたり、承認の分岐を追加したりしていきます。最初にハードルを上げすぎないことが、長く続くコツです。

台帳で催促が減る

紙の回覧だと「いまどこ?」「誰が持ってる?」「承認済み?」が分からず、口頭やメールで確認する時間が増えます。これが地味にしんどい。そこで効くのが、申請データが自動でたまる一覧、いわゆる台帳です。

台帳があると、申請日、申請者、金額、ステータス(申請中、承認待ち、差戻し、完了)などが一目で見えます。すると、確認のための連絡が激減します。

さらに、台帳は”集計の土台”にもなります。例えば、月末に経費精算の件数と金額を集計する、部門別の申請量を把握する、差戻しが多い項目を見つける。こうした改善ができると、単に紙をなくすだけでなく、仕事の質が上がっていきます。ここが本当の意味での「ラク」です。

注意点としては、台帳を作っても「更新が手作業」だと意味が薄れます。理想は、申請が出たら自動で台帳に追加され、承認が進むとステータスが変わる形です。最初から完璧な自動更新が難しければ、まずは申請の登録だけ自動、ステータス更新は簡易でもOKです。大事なのは、見える化が途切れないこと。見える化が続くと、現場の安心感が増え、紙に戻る理由が減ります。

kintoneは小さく始める

kintoneのような業務アプリが向いているのは、「現場の業務に合わせて、入力フォームと一覧(台帳)を作りたい」ケースです。紙で使っていた申請書を元に入力画面を作り、提出されたデータが自動で一覧にたまり、担当者が処理状況を更新する。こうした流れは、現場がイメージしやすく、定着もしやすいです。

ただし、最初から全社の申請を全部kintoneに乗せようとすると、設計も調整も大きくなりすぎて止まりがちです。おすすめは、改善効果が出やすい申請を一つ選び、そこで成功パターンを作ることです。例えば、経費精算、備品購入、休暇申請など、頻度が高くて承認ルートが比較的固定のものが向いています。

内製化の観点では、「まず自分たちで触れる範囲」を増やすのがポイントです。項目の追加や表示順の変更、一覧の並び替え、通知の設定など、日々の改善を自分たちで回せると、外部に毎回頼らずに済みます。伴走ナビは、事例をもとに”現場が自走できる形”を作る支援が得意なので、最初の設計と運用のコツまで一緒に固めたい場合は、無料相談で状況を聞かせてもらうのが早いです。

ツール比較と見積もり

「何を買えばいいの?」は、紙の仕事を減らしたい人が必ずぶつかる壁です。ここで大事なのは、流行りの名前で選ばないこと。スキャン、OCR、ワークフロー、RPAなど、得意分野が違います。目的と現状を合わせると、必要なものは意外と絞れます。見積もりも、初期費用だけ見て判断すると、運用で詰みやすいので注意が必要です。

目的で選ぶ

紙の仕事を減らすと言っても、困っているポイントは職場で違います。だから、道具は”紙かデジタルか”ではなく、“何のムダを減らすか”で選ぶのがコツです。例えば、

  • 探すのがつらい:スキャン+検索しやすい保管ルール
  • 転記がつらい:入力フォーム化、またはOCR+確認フロー
  • 待ちがつらい:申請と承認のワークフロー化、進捗の見える化

このように目的が決まると、検討すべきツールの種類が絞れます。

さらに現実的な話をすると、複数のツールを同時に入れると現場が混乱します。最初は一つの課題に絞り、そこで成果を出す。成果が出ると、次の改善の社内理解が取りやすくなります。ここが、初心者の現場でも進めやすい順番です。

制度面が関係する書類(請求書、領収書など)を扱う場合は、国税庁の電帳法特設サイトやQ&Aで、電子取引やスキャナ保存の考え方を確認しつつ進めると安心です。

見積もりは運用重視

見積もりでよくある失敗は、初期費用の安さだけで決めて、運用で負担が増えることです。例えば、OCRを入れたのに確認作業が増えて結局手入力に戻る、ワークフローを入れたのにルール変更のたびに改修費がかかる、保管の仕組みを入れたのに検索しづらくて使われない。こうなると、現場の信頼を失い、次の改善が通りにくくなります。

確認したいポイントは、次のような”運用の現実”に直結するものです。

  • 利用人数や処理件数が増えたときの料金体系(従量課金かどうか)
  • 権限設定や閲覧制限がどこまでできるか(部署別、役職別など)
  • 変更が発生したときの対応(自社で直せる範囲、保守の範囲)
  • サポートの内容(問い合わせ方法、対応時間、導入支援の有無)

ここで重要なのは、全部を細かく比較しすぎないことです。最初の段階では「現場が使えるか」「止まらず回るか」を優先し、必要最低限の条件だけを満たすものを選びます。細かい機能差は、運用が回り始めてからでも十分に判断できます。

小さく始めて成功体験

紙の改善を成功させるコツは、最初に”勝てる戦い”を選ぶことです。おすすめは、対象範囲を小さくして、短期間で成果が見える形にすること。例えば、一部署だけ、あるいは一つの申請だけに絞ります。

小さく始めると何が良いかというと、失敗しても傷が浅く、改善が早いことです。入力項目が多すぎたら減らす、承認ルートが合わなければ見直す、通知がうるさければ調整する。こうした微調整を回しながら、現場に合う形に寄せられます。

そして、ここが大事なのですが、成功体験ができると社内説明が圧倒的にラクになります。「この申請は、月末の手戻りが減って、処理が早くなった」「差戻しが減って、問い合わせが減った」という具体例があると、反対意見が出にくいです。伴走ナビは事例が豊富なので、似た業種・似た業務の成功パターンを参考にしながら進めやすいのも強みです。

つまずき回避と定着

紙の仕事を減らす取り組みは、ツールの問題というより「人の不安」と「運用のあいまいさ」で止まることが多いです。現場の抵抗が出るのは自然なことなので、最初から”反発が出にくい設計”にしておくと進みやすくなります。

反発の理由は3つ

現場がデジタル化に反発する時、多くはわがままではなく、ちゃんと理由があります。代表的なのは次の三つです。

一つ目は慣れです。紙は、長年の手順が体に染みついています。二つ目は責任です。「もしミスが出たら誰が責任を取るの?」という不安が出ます。三つ目は面倒くささです。新しい操作を覚える時間がない、忙しいのに負担が増える気がする。

ここを無視して「便利だからやろう」と押し切ると、表面上は導入できても、結局紙に戻ります。だから、最初に伝え方を工夫します。例えば、

1.
慣れへの対策:最初は紙と同じ流れで、画面は”写し”から入る
2.
責任への対策:承認ログや履歴が残るから、むしろ安心できると説明する
3.
面倒への対策:入力項目を減らし、1回の操作で終わる設計にする

こうした安心材料を先に用意すると、現場は「やらされる」から「試してみる」に変わります。特に初心者の現場では、初回の体験がすべてです。最初の1週間で「ラクになった」が出る設計にすると、その後の広がりが早くなります。

運用ルールは短く

ルール作りでやりがちなのが、最初から完璧なマニュアルを作ろうとして、分厚くなることです。分厚いルールは読まれません。読まれないと、結局みんな自己流になって、仕組みが崩れます。だから、運用ルールは短くします。

最低限、決めるべきは「入力」「承認」「保管」の三つです。入力では、必須項目と添付の扱い。承認では、代理承認と差戻しのルール。保管では、どこに置き、誰が見られるか。これだけでも迷いが減ります。

例外は、全部を文章で縛るのではなく、逃げ道を作るのがコツです。例えば、備考欄に理由を書けば進められる、申請者に差戻す時はテンプレの理由を選べる、など。例外が起きた時に止めない仕組みがあると、現場のストレスが減り、紙に戻る理由が薄れます。

また、業務改革の進め方や共通ルールの整備という観点では、デジタル庁が標準ガイドライン群を公開しており、考え方の参考になります。中小企業向けにそのまま当てはめる必要はありませんが、「手順を整える」「関係者の役割を明確にする」という発想は、社内展開で役立ちます。

無料相談と資料請求

ここまで読んで、「うちの場合はどこからやればいいの?」と迷うのは普通です。紙の仕事は会社ごとに流れが違うので、一般論だけだと最後の一歩が決めにくいんですよね。

無料相談が向いているのは、次のような状況です。現状を聞いた上で、優先順位と進め方を一緒に整理できます。例えば、申請が止まる原因が回覧なのか転記なのか、最初のテーマはどれが勝ちやすいか、kintoneで内製化できる範囲はどこか、などが具体化します。

資料請求が向いているのは、社内に説明したい段階です。「なぜ今やるのか」「どんな進め方か」「支援内容は何か」を、上司や関係部署に共有しやすくなります。

どちらの場合も、目指すのは大げさな改革ではなく、現場の負担を増やさずに紙のムダを減らすことです。まず一つ成功させて、そこから広げる。これがいちばん堅実です。

まとめ|まず一枚、ムダが多い紙から減らそう

紙の仕事をラクにするコツは、「全部なくす」ではなく、ムダが大きいところから順番に減らすことです。探す、待つ、転記、保管のどれが重いかを見つけ、入口をフォーム化し、必要ならスキャンやOCRを組み合わせ、承認は見える化して止まりにくくする。これだけで体感はかなり変わります。

もし次の一手に迷ったら、まずは頻度が高い申請を一つ選び、現状の流れを書き出してみてください。それだけで改善ポイントが見えます。社内で進め方を固めたい場合は伴走ナビの「無料相談」、関係者に共有する材料が欲しい場合は「資料請求」を使うと、前に進みやすくなります。

伴走ナビ管理人
サイボウズパートナーのペパコミ株式会社で年間100社以上のkintone構築と伴走サポートの案件に携わり、kintoneだけでなくプラグイン設定も数多く経験。システム機能だけではなく、社内業務コンサルとしての目線で中小企業のDX化を推進しています。
       

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