紙の書類だらけを卒業する:今日からできる紙の仕事の自動化手順と失敗しない進め方【完全版】

紙の申請書、領収書、見積もり、請求書、稟議書。毎日が「印刷→手書き→ハンコ→回覧→保管」で、探すだけでも一苦労ですよね。しかも入力ミスや二重入力が起きやすく、忙しいほど事故が増えます。
とはいえ、いきなり全部を電子化しようとすると、現場が混乱して失敗しがちです。コツは、紙をなくす前に「どこで紙が生まれて、どこで止まっているか」を見える化し、効果が出やすいところから小さく進めること。
この記事では、紙の仕事を自動化する考え方、具体的な進め方、ツールの選び方、つまずきやすいポイント、そして伴走ナビで相談できることまでまとめます。
読みながら「うちだとこれだな」と思う紙が一つでも見つかれば、それだけで前進です。最後に、社内で話を通すときのポイントも触れるので、ぜひそのまま使ってください。
目次
紙が増える理由をほどく

紙の仕事がつらいのは、紙そのものが悪いというより、紙が「探す」「写す」「待つ」を増やしやすいからです。自動化は、紙をゼロにする魔法ではありませんが、ムダな手間を減らして”止まり”をなくすのが得意です。まずは、よくある原因と、効果が出やすい場所、逆に慎重に進めたい場面を押さえましょう。
原因と効果をセットで理解する
紙が増える理由は、だいたい三つに集約されます。第一に「入口がバラバラ」。部署ごとに様式が違い、Excelも紙も混在して、どれが最新版か分からなくなります。第二に「転記が多い」。紙の内容を別の台帳やシステムへ打ち直すので、時間もミスも増えます。第三に「承認で止まる」。回覧箱や机の上で埋もれ、誰のところで止まっているか分からないまま締め日が来ます。
ここで怖いのは、手間が増えるだけでなく、判断の質も落ちることです。例えば稟議が遅れて発注が遅れる。請求書の入力が遅れて支払いが遅れる。見積もり回答が遅れて機会損失が出る。紙は小さな遅れを積み重ねやすいんです。
さらに、紙の「一時置き」が増えると、同じ書類が二つ三つと複製され、保管場所も担当者ごとにバラバラになりがちです。結果として探す時間が増え、引き継ぎのたびに混乱が起きます。
自動化でラクになるのは、まさにこの三兄弟を減らすことです。入口をフォーム入力に寄せると、転記が減ってミスが減ります。承認をワークフローにすると、通知と履歴で”止まり”が見えるので、催促もしやすくなります。検索できる台帳にまとまれば、探す時間も激減します。結果として、残業の原因になりがちな細切れ作業がまとまって消えます。
一方で「慎重に進めたい紙」もあります。契約書など取引先の都合が絡む書類は、相手の運用もあるので段取りが必要です。領収書や請求書などの税務書類も、保存制度の要件を守る必要があります。国の押印見直しや電子保存制度の情報を確認しつつ、社内の経理担当とすり合わせて進めると後戻りが減ります。
ポイントは、紙を全部なくすことではなく、ムダな紙の流れを減らして「仕事が前に進む」状態を作ること。ここをゴールにすると、現場も納得しやすくなります。
いきなりツールは買わない

よくある失敗は、便利そうなツールを先に入れてしまい、現場の運用が追いつかず紙に戻るパターンです。成功する会社は逆で、まず紙の流れを見える化して「どこを直せば一番ラクになるか」を決めています。ここでは、専門知識がなくてもできる棚卸しと、順番の決め方を紹介します。
棚卸しから試行までの手順
まずは“紙を一枚だけ”選びます。例えば経費精算、見積もり依頼、稟議、日報など、今いちばんしんどいものがベストです。その紙を手に持ち、次の順で追いかけます。
最初に見るのは「紙が生まれる場所」。誰が、いつ、何を見ながら書くのかです。次に「紙が行き着くゴール」。最終的にどこへ入力され、どこに保管されるのかを確認します。ここで「結局Excelに打ち直している」「承認のために紙を回している」「同じ情報を別の台帳にも書いている」など、ムダの正体が見えてきます。
棚卸しで書き出す項目は、難しく考えず、次の5つで十分です。
1. その紙は何のためのものか(目的)
2. 関係者は誰か(作成、確認、承認、保管)
3. 入力項目は何か(手書きか、印字か)
4. 例外は何があるか(差し戻し、添付不足など)
5. 最終的に入る場所はどこか(Excel、会計ソフト、基幹など)
次に、ざっくり数字を出します。月の件数、1件あたりの所要時間、承認で止まる平均日数。この三つだけで十分です。月件数×分数で”積み上がる手間”が分かり、止まり日数で”締めに響く度合い”が分かります。例えば月200件で1件8分なら、月に約1600分、つまり26時間以上が紙処理で消えています。これが見えると、社内の合意が取りやすくなります。
最後に、小さく試します。1部署、1業務、1か月くらいでOK。完璧を目指さず、入力項目を減らす、添付を必須にする、通知を増やすなど、現場の声を聞いてすぐ直します。ここで「直せる人」を決めておくと、紙に戻りにくくなります。外部に頼む場合でも、社内の窓口がいるだけで改善速度が変わります。
コツは、最初から100点を狙わないこと。60点で回し、80点に育てる。これが紙の自動化を成功させる近道です。
業務別にイメージする

「理屈は分かったけど、自社だと何から?」となりやすいので、よくある紙の仕事を三つにしぼって、進め方のイメージを具体化します。ここで全体像がつかめると、社内でも話が通りやすくなります。
三業務の進め方イメージ
経費精算は、紙の代表格です。まずは「精算フォームに入力→領収書は写真添付→承認→台帳へ自動集計」という流れを目指します。最初からOCRで金額を全部読み取るより、入力項目を絞って、添付の必須化と承認の通知を整えるだけでもかなりラクになります。慣れてきたら、OCRで金額や日付を補助的に取り込み、チェックを例外だけにしていくと効果が伸びます。
請求書の受領は、紙とPDFが混ざりがちです。ここは「受領したら一か所に集める」が第一歩です。専用のメールアドレスや共有フォルダに集約し、ファイル名をルール化します。そのうえで、台帳に登録する作業をRPAで肩代わりさせると、入力の手間が減ります。支払い期日の管理も台帳で見える化できるので、遅延リスクも下がります。
稟議や申請は、待ち時間が大きいので、ワークフロー化の効果が出やすいです。いきなり全ての稟議を対象にせず、まずは「購入申請」など定型のものから始めます。承認ルートは王道だけ作り、例外は差し戻しコメントで回す。これだけで「どこで止まっているか分からない」が減り、現場のイライラがかなり収まります。
日報や点検表のような現場系は、紙を回収して入力し直す流れがボトルネックになりがちです。ここは、スマホ入力に寄せて、そのまま一覧で見える状態にすると早いです。写真や位置情報が必要なら添付で残し、確認者がコメントで返せる形にすると、紙の回収そのものが不要になります。
方法は四つで考える

紙の仕事の自動化にはいろいろな手段がありますが、迷ったら四つに分けて考えると整理できます。紙をデータにする、転記を減らす、承認を速くする、入口をそろえる。このうち、あなたの会社の”詰まりどころ”に合うものから選ぶのが近道です。
やり方別の向き不向き
紙をデータにする代表がスキャンとOCRです。印字された請求書は読み取りやすい一方、手書きは精度が落ちやすいので、まずは定型の紙から始めるのがコツです。読み取り精度を上げる工夫として、紙の折れや汚れを減らす、解像度を一定にする、書式を統一する、などがあります。
読み取った後は、台帳や業務アプリへ取り込んで検索できる状態まで持っていくと効果が出ます。経理系は保存制度の要件もあるため、運用ルールを先に確認しておくと安心です。
転記を減らす代表がRPAです。メール添付のPDFを保存して台帳に登録する、Web画面へ同じ項目を入力する、毎月同じサイトからデータを取ってくる、といった「手順が同じ」作業が得意です。ここで大事なのは、例外を減らす設計です。入力項目をそろえる、ファイル名を統一する、必須項目を決める。こうしておくとロボットが迷いません。止まったときの通知やログを用意しておけば、現場が不安になりにくいです。
承認を速くする代表がワークフローです。申請が出たら自動通知、承認したら次へ回る、履歴が残る。これだけで、回覧箱の迷子が減ります。承認ルートは最初から完璧にせず、王道ルートだけ作って運用しながら整えるのが現実的です。現場のストレスを減らしたいなら、コメント欄を必ず付けて差し戻し理由を残せるようにすると、やり直しの時間が減ります。
入口をそろえる代表が業務アプリです。例えばkintoneなら、フォーム入力、台帳、コメント、添付、進捗を一つにまとめられます。入口がそろうと、その先の自動化(通知、集計、承認、連携)がやりやすくなり、紙に戻る理由が減ります。中小企業向けのDX推進資料でも、kintoneで書類をアプリ化し、関係者を巻き込んでペーパーレス化を進めた事例が紹介されています。
結局どれを選ぶか迷ったら、棚卸しで見えた”詰まり”に合わせて選びます。探すのがつらいなら台帳化、転記がつらいならRPA寄せ、承認がつらいならワークフロー、入口がバラバラならアプリ化。ここが合うと、導入後の満足度が一気に上がります。
特に最初は、入力や承認の”入口側”を整えるだけで体感が大きく変わることが多いです。
費用と社内説明でつまずかない

紙の自動化は「便利そうだけど高そう」と感じやすく、ここで止まってしまう会社も多いです。実は、費用は”ツール代だけ”で考えるとズレます。見えにくいコストも含めて整理し、数字で説明できる形にすると、稟議が通りやすくなります。
費用の見方と説明のコツ
費用を考えるときは、まず「初期」と「月額」と「運用」に分けます。ツール代は分かりやすいですが、実は運用コストが効いてきます。例えば、入力の確認に毎月何時間かかるか、設定変更に誰が何時間使うか、現場の問い合わせ対応がどれくらい出るか、です。ここを見落とすと「入れたのにラクにならない」となりやすいです。
ざっくりで良いので、次の観点で整理すると説明がしやすくなります。
1. 初期:設定、データ移行、様式の整理、教育
2. 月額:利用料、アカウント、オプション(OCR枚数など)
3. 運用:チェック時間、例外処理、改善作業、問い合わせ対応
稟議では「いくら減るか」を数字で示すのが強いです。棚卸しで出した月間作業時間から、まず3割減でもOKとして見積もる。例えば月26時間が18時間になるなら、月8時間の削減です。これが複数業務に広がれば、投資の意味が見えます。また、ミス削減や支払い遅延の防止は”損失回避”として説明できます。現場がラクになることと、会社が得することをセットで語れると、前に進みやすくなります。
もう一つ見落としやすいのが、改修のたびに発生する費用です。運用していると「項目を一つ増やしたい」「承認者を追加したい」「通知の文面を変えたい」といった小さな変更が必ず出ます。ここを外注任せにすると、毎回の見積もりと待ち時間でスピードが落ちます。kintoneなどで内製化しやすい部分を増やすと、ちょい直しが自社でできて、結果的に総コストが下がりやすいです。
定着が一番むずかしい

仕組みは作っただけでは広がりません。紙の自動化は、現場が「ラクになった」と感じてはじめて定着します。そのためには、ゴール設定、試行、ルール作り、改善のサイクルを回すことが大切です。ここでは、社内で進める順番と、紙に戻りやすい落とし穴をまとめます。
進め方と注意点
まずゴールを決めます。おすすめは、作業時間、ミス件数、承認日数の三つです。数字で見えると社内説明がラクで、途中でブレません。次に、小さく試して改善します。入力項目が多いなら削る、添付が分かりにくいなら説明を足す、通知が弱いなら強化する。ここはスピード勝負で、翌週には直せるのが理想です。
よくある失敗は三つです。
1. スキャンだけして終わり、データが活用されない
2. 例外が多すぎて運用が破綻する
3. 担当者しか分からず属人化する
対策は「ゴールを台帳化までに置く」「例外は最初から割り切って記録する」「ルールを決めて誰でも回せるようにする」です。特に例外は、最初からゼロにできません。だから、例外を”見える化して減らしていく”設計にすると現実的です。
ルールで効くのは、権限と命名です。誰が入力できて、誰が承認できて、誰が閲覧だけか。ファイル名や保存場所をどうするか。これが曖昧だと、せっかく電子化しても探す地獄が続きます。逆に、厳しすぎると更新が止まるので、最初は”必要最低限”から始め、困ったら調整するくらいがちょうどいいです。
最後に、現場への伝え方も大事です。「紙をやめろ」だと反発が出ます。そうではなく「探す時間を減らそう」「差し戻しを減らそう」「締め日に間に合わせよう」と、現場が得する言い方に変えるだけで空気が変わります。定着は技術よりコミュニケーション。ここを押さえると、導入はグッとラクになります。
さらに、情報の扱いも最初に決めておくと安心です。例えば、見積もりや請求書は社外秘になりやすいので、閲覧権限を必要な人に絞る。添付ファイルのダウンロード制限を考える。更新履歴が残る運用にする。バックアップや退職者の権限削除もルール化する。ここまでやっておくと「便利だけど怖い」という不安が減り、定着が速くなります。
まとめ|次の一歩は一枚の紙から
ここまでの話を一言でまとめると、紙の仕事の自動化は「全部やる」ではなく「勝てるところから小さく始めて、直せる仕組みにする」が近道です。ツール名から入らず、流れの見える化と優先順位づけを先にやると、失敗が激減します。
無料相談と資料請求で前に進める
最初の一歩は、今日中にできる小さなものでOKです。例えば「一番しんどい紙を一つ選ぶ」「その紙がどこから来てどこへ行くかを追いかける」「月に何件あるかだけ数える」。これだけで、やるべき順番が見えてきます。次に、入口をそろえるのか、承認を速くするのか、転記を減らすのか、狙いを一つに絞って試してみてください。ここで一気に全部を変えようとすると疲れるので、まずは”毎週必ず発生する紙”から始めるのがおすすめです。
とはいえ、社内だけで進めるのが不安なこともあります。伴走ナビでは、事例をもとに「どこから始めると効果が出やすいか」を一緒に整理し、kintone活用も含めて”自社で直せるDX”を目指す支援を行っています。ツール選定だけでなく、棚卸し、試行、ルール作り、定着までを一続きで考えるので、「やることが多すぎて止まる」を防ぎやすいのが強みです。
社内共有のコツは、いきなり結論を押し付けないことです。まずは棚卸しで出した「月に何時間消えているか」「どこで止まっているか」を1枚にまとめ、関係者に見せてみてください。数字があると話が早く、反対も減ります。
次のアクションとしては、現状を話して整理したい場合は無料相談、社内共有用に情報をまとめたい場合は資料請求を活用してください。現状と目標が整理できると、社内でも動きやすくなります。小さく始めて改善を重ねれば、紙のストレスはちゃんと減っていきます。
まずは一業務だけでOK。迷ったら担当者が少ない仕事から。焦らず進めれば、紙はちゃんと減ります。できたら次の業務へ広げる、の繰り返しがいちばん強いです。













