内製化とは?メリット・デメリットやkintone活用例を解説
DXが叫ばれる昨今、デジタル化を進めるべく専任の担当者やプロジェクトを新設する企業も増えてきました。
外部に依頼している業務や、アナログ管理から脱却したい業務など、新たにシステム開発を検討することで、業務プロセスを改善できるケースも多くあります。
経営課題にも直結する業務改善、仕組み作りですが、これらを社内リソースでまかなうことができれば、コスト面だけでなく企業の成長にもつながり有益です。
ただし、業務そのものや社内リソースを十分に把握しないまま取り組むと、取り返しのつかないことになる場合もあります。
そこで本記事では、社内リソースを活用した業務の内製化を進める場合のメリットやデメリット、おさえておきたいポイントをはじめ、システム構築に効果的なkintoneを使った事例を交えながら解説していきます。
この記事でわかること
- 内製化のメリット・デメリット
- 内製化かアウトソーシングかの判断ポイント
- 内製化を失敗させないためのポイント
- kintoneが内製化に向いている理由
- kintoneの内製化成功例
こんな人におすすめの記事です
- 内製化すべきかどうかのポイントや他社の事例を知りたい方
- 経営課題の改善として業務革新や効率化を図りたい方
- 社内の仕組みづくりやDXを進めている担当の方
目次
内製化とは?
自社の業務を外部に委託することを「外部委託」「アウトソーシング」と言います。耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。
これに対し、自社の業務を自社内のリソースへ切り替えていくことを「内製化」「インソーシング」または「インハウス」と言います。
アウトソーシングする業務の例として、事務業務やシステム開発・運用などがあり、活用している企業も多く見受けられるところです。しかし、昨今ではこれらの業務を内製化する企業も増え、注目が集まっています。
内製化の目的
いくら注目が集まっているからとはいえ、目的なしに内製化を進めてしまうと、その成果がなかなか得られない…なんて事態に陥ってしまうことも少なくありません。
内製化を検討するときは、次の2つの目的が果たせるかどうかが重要になってきます。
①業務効率化
アウトソーシングで対応する業務の多くは、その分野において専門性の高い業者に依頼するケースが多いです。ただし、イレギュラーが発生しやすい業務や、都度判断が必要な業務の場合は要注意。その委託先がいくら知識に精通し経験があっても、あくまで外部の組織であることを忘れてはいけません。委託先は社内の事情まで熟知しているわけではないからです。
法律に基づいて行なう業務や、社内ルールに倣って行なう業務など、いわゆる定型業務でなければ、何かある度に都度連携する必要があり、かえって効率が悪くなることもあります。
社内でやるのか、外部に依頼するのかの見極めは大切です。
②経費削減
アウトソーシングの場合、仕事を依頼していますので当然費用が発生します。
委託内容にもよりますが、月額固定費に加え、内容やボリュームによって追加費用が発生するというのはよく見られるケースです。
もし外部に委託している業務を社内のリソースで賄うことができれば、費用を抑えられ、経費削減につながります。経費をかけて外部へ委託する業務なのか、費用対効果をよく検討する必要があるでしょう。
内製化が注目されている理由(2025年の崖)
いま内製化が注目されているのは、経済産業省が発表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』が大きく関係しています。
では「2025年の崖」とは一体どんなものなのでしょうか。要点は以下の通りです。
- 既存のシステムが過剰なカスタマイズでブラックボックス化しており、データを活用できていない現状がある
- その問題を、業務自体の見直しとともに解決を図る必要がある
- これらの課題を解決できない場合、2025年以降最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性がある
この原因の一つとして、システムの構築・運営はアウトソーシングし、社内にIT人材を置いていないケースが日本では欧米に比べて多いことが挙げられます。
そのため、ナレッジやノウハウが社内に蓄積されず、問題を放置またはそもそも気づかないという事態に陥りやすいのです。こうした背景から、社内にITに明るい人材を置き、内製化を図る企業が増加しつつあります。
内製化のメリット・デメリット
便利であるはずの業務システムですが、かえって問題をきたす可能性もあることをご理解いただけたかと思います。
ここでは、業務システムを内製化することでどのようなメリット・デメリットが考えられるのか、解説していきます。
メリット
まずは、メリットから見ていきましょう。
①業務スピードの向上
アウトソーシングの場合、発注にかかる契約や内容のすり合わせ、社内決裁、スケジューリングと、何かと時間が取られがちです。
内製化することで、調整するのは社内の関係者のみであり、実行までのプロセスもシンプルなものになり、スピード良く進められるでしょう。社内の事情がわかる人同士で話し合うことができるので、細かく説明する手間も少なく、効率的です。
②即時対応・臨機応変
社内ルールの変更やトラブル時、すぐにシステムを改修しなければならないときがあります。アウトソーシングによってシステムを運用していると、依頼できる範囲が決められていたり、連絡できるタイミングが限られていたりと、対応の遅れが生じる場合があります。内製化していれば即時対応でき、社内の状況によって柔軟で臨機応変な対応がしやすいでしょう。
③外注コストの削減
言うまでもなく、外部に委託している以上コストは発生します。また、見積書からわかる金銭的なコストだけでなく、メールや電話、打ち合わせなどのコミュニケーションコストや、委託にかかる事務処理の時間コストも発生するのです。
内製化によってシステムについて社員同士でコミュニケーションを図ることで、打ち合わせを重ねるごとにやり取りがスムーズになり、時間の削減に繋がります。
④社内のノウハウ・ナレッジの蓄積
内製化すると社内の人材が業務に携わる機会が増えます。実際の業務に携わることで、システムの仕様がわかるだけでなく、「このエラー時はこう対応する」「ルールが変更されたらここを直す」といったノウハウやナレッジも蓄積していきます。
このことで、まさに2025年の崖問題にもあった「システムのブラックボックス化」を避けることができるでしょう。また、中長期的な人材育成にもなり、業務改善の効果にも期待できます。
⑤セキュリティ向上
自社の技術や顧客情報など、社内は多くの情報資産に溢れています。アウトソーシングするということは、機密情報を外部に持ち出すということ。
近年はセキュリティ対策の質も向上してきている一方で、サイバー犯罪の手口も巧妙になってきており、出来る限り大事な情報は社内に留めておきたいところです。内製化を進めることで、情報漏洩リスクの大幅な減少に繋がるでしょう。
デメリット
内製化のメリットを紹介しましたが、ではデメリットとしてどのようなものが考えられるでしょうか。
①初期・運用コストの負担
内製化を行なうことで、アウトソーシングの際には必要のなかった、設備や機器・道具、ITツールの準備が必要となる場合があります。
IT業務においてはパソコンやサーバーなどのハードウェアや、必要なコミュニケーションツールなどのソフトウェアだけでなく、場合によっては什器や消耗品、備品を準備しなければならない場合もあるでしょう。
内製化のためにどの程度コストが発生するのか、予め調査することは必至です。コストは初期のみ発生するのか、ランニングコストはあるのか、購入とレンタルとの比較など、長期的な視点で検討するようにしましょう。
②人材獲得・育成に時間を要する
専門性の高さが特長のアウトソーシング。実現したい業務を即座に叶えてくれるのが、アウトソーシングの強みです。そのため内製化にあたり、アウトソーシング同等のスキルを持つ人材が社内に必要になります。
戦力となるまで育成するために、座学研修やOJTなど一定期間のトレーニングを行なうことになるでしょう。人材を育成して実務で通用するようになるまでにはある程度時間がかかることを想定し、内製化の計画を立てることが重要です。
また、そもそも適当な人材が社内では見当たらない場合、新たに採用をしなければならない可能性もあります。そうなれば入社までの時間も加算されるため、より長期間となる点を考慮する必要があるでしょう。
③コスト意識が低くなる可能性
アウトソーシングの場合は、発生する費用が明確で、見積りをもらうことで可視化ができます。しかし、内製化の場合は可視化されづらい費用が多く発生しています。人件費、設備・機器類や運用ツールにかかるコストなど様々です。
特に、専任でなく他業務との兼任の場合は、人件費において業務割合を加味するなど、さらにコストの把握が難しくなります。社内で対応できるのは便利である一方で、コスト意識が低くなる可能性があり、注意が必要です。
④急な案件や、業務量増加に追い付かない可能性
内製化ができるようになってから、対応すべき業務が急増した場合、社内のリソースが限られていてこれ以上対応できないというケースが考えられます。
アウトソーシングの場合は業務量の増減にかかわらず対応が可能であるため、この点は内製化の場合にデメリットとなるでしょう。内製化においては、担当者が対応できる業務量やスケジュール感を社内で把握しておく必要があります。
⑤システムのクオリティ維持のハードルが高い
これまでアウトソーシングとしてプロに依頼していた業務を、社内対応に切り替えるのが内製化です。内製化すると、アウトソーシングしていた時と同じクオリティでシステムを維持する難しさを感じるかもしれません。
業務改善や問題解決に必要な知識や技術を身に付け、実践で活かすまでにかかる時間やコストも加味して、内製化の準備を整える必要があるでしょう。
外注(アウトソーシング)の問題点
ここまで、内製化のメリットとデメリットについて紹介してきました。
ここでは改めて外注(アウトソーシング)の問題点はどういったものがあるのか、次の4つの点から詳しく解説していきます。
- 社内のノウハウが育たない
- 情報管理の都合上、外注可能な業務には限界がある
- コミュニケーションコストがかかってしまう
- 外注から内製化への切り替えハードルが高い
①社内のノウハウが育たない
アウトソーシングの場合、依頼した側は完成形しか目にすることがありません。その過程にある技術や背景がわからないので、どのようにして、なぜそのような形になったか内容を把握することが難しくなります。
一方、内製化できれば初めのうちは育成コストが発生しますが、蓄積した知見・ノウハウは会社の財産となります。
②情報管理の都合上、外注可能な業務には限界がある
社外秘の機密情報や個人情報などを取り扱う業務など、そもそも情報を社外に出すことができないケースもあります。
それでもアウトソーシングする必要がある場合は、情報管理に適した十分なシステムが構築されている、機密情報の取り扱い実績があるなど、信頼できる業者を選択するようにしましょう。
③コミュニケーションコストがかかってしまう
内製化に比べて、アウトソーシングではコミュニケーションコストがかかります。たとえば業務システムの開発の場合、現場の状況を全く知らない相手に対して一から正確に情報や課題を伝えることに時間が取られます。
自社の理念や方向性がわかっている社内のメンバーであれば言わなくてもわかることを、委託先には都度伝えていく必要があるでしょう。ちょっとした簡単な修正が頻繁にあるような場合はなおさら、自分たちで対応できた方が早いということもあります。
④外注から内製化への切り替えハードルが高い
既存のシステムをアウトソーシングで開発・運用している期間が長い場合、内製化に舵を切りづらい部分があります。
なぜなら、いくら発注した側であってもシステムの全容を把握し、仕様を理解するのに時間がかかるからです。よくわからないまま内製化をしてしまうと、かえって業務やシステムに支障をきたしてしまう恐れもあるので、慎重に検討する必要があります。
内製化かアウトソーシングかを判断する5つのポイント
ここまで紹介してきた内製化とアウトソーシングの特徴を踏まえて、どちらにすべきか悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか。どちらが良い悪いということはなく、自社にとってどちらが適切かという観点で判断することが大切です。
ここでは、内製化かアウトソーシングかを判断する5つのポイントを紹介していきますので、よく検討してみましょう。
- コスト
- 業務継続性
- 人材
- 内製化の範囲
- コア業務かどうか
ポイント①:コスト
アウトソーシングは業務を依頼すれば、当然費用が発生します。対して内製化はコストを抑えられます。ただし、社内のリソースだからコストゼロ、というわけではありません。人件費だけでなく設備投資や育成にかかる投資を行なっており、業務を内製化しても発生する費用はあるのです。
そこでまずは業務の発生頻度や難易度、ボリュームなどの想定を洗い出してみてください。それらを元に内製化とアウトソーシングではどのくらい費用対効果に差があるか試算し、総合的に判断するとよいでしょう。
ポイント②:業務継続性
アウトソーシングか内製化するかを検討している業務が、どのくらいの期間を要するものなのかによって、どちらが適切かが変わってきます。
結論としては、短期間ならアウトソーシング、長期間なら内製化を検討するのが良いでしょう。短期間の業務であれば、既にノウハウのある外部に頼った方がコストも時間も安く早く済みます。
一方、長期にわたる業務であれば、自社内で調整や改善をはかりながら進めていくことで、中長期的に見るとコストを抑えられる可能性があります。また、社内リソースの技術力が上がり、ノウハウも蓄積できるでしょう。
ポイント③:人材
専門的な知識が必要な業務の場合は特に、誰が対応するかの選定が重要です。内製化を考えるとき、対応する人への教育や研修と並行して業務に取り掛かることを想定する必要があります。理由は、人材育成には時間や費用がかかるためです。
場合によっては、アウトソーシングの方がスムーズに進むこともあります。業務の内容、専門性の高さの観点からも、どちらが良いのか検討しましょう。
ポイント④:内製化の範囲
アウトソーシングか内製化するかは、該当業務のすべてを対象として考える必要はありません。すべて内製化しようとすると、対応する社員の業務量が増え、残業してさらにコストもかさむといったことも考えられます。一部分はアウトソーシングし、残りを内製化する、という方法もあります。
重要なのは業務を棚卸し、内製化すべき(したい)範囲を明確にすること。その際、どの業務をどの範囲で内製化できるか、クオリティを落とさずにすむ内製化の範囲はどこまでか、を判断材料にしながら検討するとよいでしょう。
ポイント⑤:コア業務かどうか
内製化するものがコア業務であれば、内製化する意義があると言えるでしょう。コア業務かどうかは、以下の3点が条件としてあげられます。
- 多様な市場へアクセスできる
- エンドユーザーの利益に貢献できる
- 競合が真似しづらい
コア業務の可能性のある技術をアウトソーシングする場合、情報資産が外部へ流出し、競争力低下のリスクを負う場合もあります。コア業務を内製化することで、オリジナルの知見をローコストで蓄積しながらも、独自のサービス提供をもたらす営業につながることもあるでしょう。
内製化を失敗させないために抑えるべきポイント
上記で紹介した判断ポイントから、内製化を検討していく場合は、リスクを最小限に抑え失敗しないために、以下の点をおさえて進めていくようにしましょう。
- 業務の棚卸をして内製化の対象を決める
- 内製化する改善業務を「管理」と「作業」に分けて考える
- 内製化による費用対効果を確認
- ノーコード/ローコードツールを選定する
- 並行した社内人材の育成|社内リソースの確保
業務の棚卸をして内製化の対象を決める
内製化かアウトソーシングを判断するポイントでも触れましたが、内製化を検討するときはまずはじめに、業務の棚卸をしましょう。
いきなり内製化を進めるのではなく、今どんな業務があり、どの部分を内製化していくのかを検討します。すべてを内製化すると固執せずに、一部の業務をアウトソーシングすることを視野に入れるのも良いでしょう。
また、社内で複数のシステムを導入している場合は、システムとその役割についても可視化しておくことで、業務改善につながるケースもあります。くり返しとなりますが、まずはじめに内製化する対象を定めることが最も重要なのです。
内製化する改善業務を「管理」と「作業」に分けて考える
内製化する対象となった改善業務は、管理と作業に分けるとよりスムーズに運用できます。
・「管理」の例:改善業務のスケジュールや計画、指示出し、運用定着を行う
・「作業」の例:指示に従って情報整理やシステム構築作業を行う
このように行動をカテゴリ分けすることにより、運用していく中でどちらかを外部に依頼するといったことも改めて検討しやすくなります。
内製化による費用対効果を確認
内製化する業務が明確になったら、かかるコストを試算します。アウトソーシングしていた業務を社内リソースで対応するのに、新たな設備やITツールだけでなく、人件費などの間接費用も考慮する必要があります。
イニシャルコスト、ランニングコストがどれくらいか、そして見合った効果が得られそうかを確認し、メリットを見いだせる場合には内製化を進めるプラス要素としましょう。
ノーコード/ローコードツールを選定する
システム開発・運用については、ノーコードもしくはローコードのITツールを活用することも、内製化を成功に導くポイントです。
ノーコード:開発言語を使わずにシステム開発を行なう手法。
ローコード:高度なコーディング知識を必要とせず、必要最低限のソースコードでシステム開発を行なう手法。
これらのITツールは、近年新たなサービスが次々と提供されつつあります。これらのツールは専門的な知識や経験がない人材でも対応が可能であることがメリットで、直感的な操作で手軽にシステム開発を行なうことができます。
内製化の際にはできるだけ属人化を防ぐことも重要になるので、幅広い人にとって使いやすい(使える可能性が高い)ノーコード/ローコードツールを選択するのが妥当といえるでしょう。
並行した社内人材の育成|社内リソースの確保
内製化を進めるにあたって、そのプロセスとして、企画、システム解析、問題や課題の洗い出し、業務改善、といったサイクルがあります。社内リソースが確保されていて、育成する人材が既に揃っている場合は、作業だけ行なうのではなくこのプロセスにも参加してもらいましょう。
一方で、相応の人材が揃っていない場合は、他部門からの異動や新規採用をするなど、リソースを確保する必要があります。この場合、教育期間がどのくらい許容なのかに応じて、人材の知識レベルや確保する方法を検討するとよいでしょう。
kintoneが内製化に向いている理由
業務の内製化にあたり、運用にはなるべく時間をかけたくないところです。内製化を失敗させないポイントとして、ノーコード/ローコードのITツールを活用してみることを先ほどお伝えしました。ここでは、ノーコードツールである『kintone』について紹介していきます。
kintoneが内製化に向いている理由は主に次の3つです。
- ドラッグ&ドロップでできるシステム開発
- あらゆる業務に対応可能な柔軟性と拡張性
- 頼れる伴走パートナーの存在
以下で、詳細を解説していきます。
理由①:ドラッグ&ドロップでできるシステム開発
システム開発には専門のスキルを必要とするのが一般的ですが、kintoneはドラッグ&ドロップで簡単にシステム開発ができます。
文字列項目や日付項目、計算項目、チェックボックス項目など、多岐に渡る種類の項目を管理画面にドラッグ&ドロップするだけで、イメージに沿ったものが作成できます。直感的に操作できるのがkintoneの大きな特長の1つです。
またノーコードツールなので、必ずしも特別に専門的な研修を受けなければ使えない、ということもありません。つまり時間的コスト・経済的コストを抑えることができ、人材育成しやすいところもkintoneのメリットといえます。
理由②:あらゆる業務に対応可能な柔軟性と拡張性
kintoneの標準機能だけではまかなえない開発が発生することもあるでしょう。その場合、一部分だけはノーコードではなく別途システム開発を行なうという手も考えられますが、kintoneには開発スキルが不要な「プラグイン」を活用することで解決できることも多くあります。
プラグインは標準機能にはない機能を兼ね備えたオプション機能のようなもので、開発スキル不要で対応することができます。また、JavaScriptやAPI連携によって機能拡張することもできるため、よりイメージに近いシステムを構築することも可能ですよ。
理由③:頼れる伴走パートナーの存在
「そうは言っても、自社のリソースとkintoneの活用だけでいきなり内製化できるのだろうか」と戸惑われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな方には、伴走パートナーと共に内製化をはじめるのがおすすめです。
kintoneを販売しているサイボウズには、サイボウズ製品の販売、開発、教育などを行うコンサルティングパートナーと呼ばれる企業が存在します。
その中でもkintoneを使ったシステム構築の伴走支援を行なうパートナー企業があるので、その企業の支援を受けながら内製化を進めることで、よりスムーズに進行していきます。その際、もちろんパートナー企業にも各社の特徴があるため、自社のゴールや方針にマッチする企業を選択すると良いでしょう。
もちろんわたしたち伴走ナビもパートナー企業として認定されており、サイボウズ社の評価制度であるCyPN Report(Cybozu Partner Network Report)にて、「セールス部門」「インテグレーション部門」で星2つの評価をいただいております。内製化を視野にしたkintoneでのシステム構築および伴走支援は特に自信を持っておりますので、お悩みの際は気軽にお問い合わせください。
また、伴走パートナーについての基礎知識や選び方のポイントなどはこちらの記事で詳しく解説していますので、内製化をどのように進めるかを検討する参考に是非一度読んでみてくださいね。
kintoneによる内製化の成功例
内製化にkintoneが向いている理由を解説してきましたが、ここではkintoneを活用して実際に内製化を実現できた例として、3つ紹介していきたいと思います。内製化を行なって、どのような変化があったのか見ていきましょう。
- 事例①:みずほ信託銀行
- 事例②:アルペン
- 事例③:奈良県葛城市役所
事例①:みずほ信託銀行
<kintone導入前の状況>
本部側が作成したExcelのフォーマットに沿って、各営業店の担当者が情報を入力。営業店からの月1回の報告を受け、本部では月末に集計処理を行なう。
<課題>
①サービスが少量多品種で、税制対応の変更の多さもあり、大規模なシステム化に踏み切れない。
②10種以上の情報を、紙やExcelで部門間共有している。
③各店ごとの情報を、毎月1回本部ですべて手作業で集計しており業務の負担が大きい。
④月末に作業が集中し、集計した情報が1か月前の古い情報となるケースもある。
<kintone導入による解決>
①ドラッグ&ドロップの操作だけで報告に必要なフォーマットを簡単に作成・変更できるように改善。個人情報の取り扱いもあるが、kintoneはセキュリティ水準を満たしている。
②約60店舗分の紙帳票が削減。ペーパーレスにつながった。
③kintone内に計算式を組むことで、集計作業が不要に。各担当者が報告事項を入力すると同時に集計も完了。
④日々の情報がタイムリーに確認でき、施策の状況判断が迅速に行えるように。PCだけでなくタブレットでも活用でき、場所を選ばない利用が可能に。
みずほ信託銀行では、およそ1700名にkintoneのアカウントを配布しています。みずほグループでは業務効率化のための仕組み作りが急務であった中、同行では業務の「内製化」を念頭に置き検討を進めていました。
システム開発を進めるだけのリテラシーや、アウトソーシングのスケールメリット、開発スピードとコストペイを考えると、kintoneで内製化をすすめる利点があり、導入を決定。
結果、kintoneを導入してから開発されたアプリは200以上。アプリ開発に必要なコンテンツも様々で、ITリテラシーに自信がない人でも手軽にアプリをつくることができています。
参考:動画で学ぶキントーン
また、RPAツールと併用しkintoneと連携させることで、作業を自動化することにも成功。
今後、業務効率化だけでなく業績向上につながる中長期的な仕組みづくりにも期待が高まります。
参考:みずほ信託銀行 導入事例
事例②:アルペン
<kintone導入前の状況>
ゴルフ用品の顧客情報は、担当の経験と紙の注文書が基になっている。業界変化の激しさに柔軟に対応するため、外部ベンダーに依頼していたシステム開発から脱却したい。
<課題>
①顧客情報が専門スタッフの経験に頼るところが大きく、属人的な管理に。スタッフの不在時や異動の際、顧客情報の検索が困難。
②外部ベンダーによるシステム開発では、稼働までに数か月以上の時間を要する。
③過去の注文情報を紙の注文書から検索しており、顧客対応が滞ってしまう。
<kintone導入による解決>
①現場のノウハウをアプリで可視化することで、店舗全体で情報を把握・共有することができるように。
②仕様変更や機能追加の機会も多いが、自分たちでアジャイル的に機能改修を繰り返せるkintoneによって、わずか2か月でローンチ。開発運用費用もなくユーザー利用料金だけなので、コスト削減に。
③約400店舗の情報を一元管理できるように。システムなので、検索効率もアップ。
アルペンは、店舗で経験を積んだ従業員がIT部門がある本社へ配属される、というキャリアパスが基本で、IT人材の育成が難しい状況にありました。そのため、ITリテラシーがなくても対応できるノーコード・ローコードITツールが求められる中、kintoneは同社にとって最適なツールでした。
標準機能に加え、豊富にあるプラグインを有効活用することで、kintoneで業務をカバーできる範囲も広がりました。今では店舗から移動してきてわずか数か月の従業員でも一人でシステム構築できるなど、kintoneは内製化になくてはならない存在になっています。
参考:アルペン 導入事例
事例③:奈良県葛城市役所
<kintone導入前の状況>
DXのため行政事務の業務改革を行なう取り組みを推進。老朽化した庁舎の除却に伴い、各窓口を一元化した「総合窓口」の新設を検討するも、業務の支援システムの導入に1,700万円超えのコストがかかる見込みであった。
<課題>
①IT人材が不足しており、システム導入と運用に不安がある。
②アウトソーシングに高額の費用がかかり、システム開発を断念しなければならない状況に。
③代替案としてExcelを活用したが、限られた機能とデータ容量の増加、検索の効率の悪さの問題が発生。
<kintone導入による解決>
①「リコージャパン」と連携協定を締結し、デジタルに明るい民間人材の派遣を受け入れ、ともに業務改革を推進。
②1の同社よりkintoneの導入の提案を受け、導入へ。システムは内製化することでコストを抑えることに成功。
③約2週間で完成。データ移行も含め、約2か月で運用開始へ。
奈良県の葛城市では、業務改善の一環として総合窓口の運用で必要となる「業務手順書」をExcelで自作しようと着手。しかしながら、必要となる16課分、約170種の業務を運用するための実用性に欠ける点と検索性の悪さから、次なる代替案に悩んでいました。
そこで候補に挙がったのがkintone。民間企業からデジタル人材として派遣されていたSEからの「kintoneなら庁内の多くの課題解決ができそうだ」という提案を受け、支援要員のSEを1人増員し改革に取り組んでいきます。
結果、アプリ本体は約2週間で完成し、実運用まではわずか2カ月のスピードで実現。作り上げた「業務手順書アプリ」によって住民の手続きや相談の約8割がkintoneで対応可能となり、職員は残りの2割だけ対応すればよい程に業務が改善されました。今では10人ほどの職員がアプリ構築スキルを身に付け、さらなる改善に取り組んでいます。
参考:ジチタイワークスWEB 全庁を挙げた“総合窓口”開設を、職員によるアプリ内製で実現。
まとめ|DXの推進にはkintoneを活用した内製化を検討しよう!
- 内製化のメリット・デメリット
- 内製化かアウトソーシングかの判断ポイント
- 内製化を失敗させないためのポイント
- kintoneが内製化に向いている理由
- kintoneの内製化成功例
本記事では、内製化を検討するにあたってこのような内容で紹介してきました。
アウトソーシングから内製化に切り替えるにあたって、スキル面でなく、自社で使いやすいように継続して運用していけるかどうかも重要なポイントです。また、内製化は必ずしも「社内のリソースだけで完結させなければいけない」というわけではありません。
ご紹介した「伴走パートナー」サービスを活用することも一つの手です。あくまで運用は自社で行なうけれども、伴走して支援してもらうことで質を落とさずに安心して長く運用できるという良さがあり、内製化してもパートナーに頼りきることなく主体性をもって取り組めます。
本記事で伴走サービスを活用しながら内製化を検討したい!という場合には、是非伴走ナビまで気軽にご相談くださいね。
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