中小企業のDX推進ガイド|成功のポイントから事例まで徹底解説
「DXは大企業がやるもの」と思っていたら、それは大きな誤解です。これまで以上に変化の激しい昨今、DXに取り組む企業とそうでない企業とでは、将来的に大きな差が開いてしまいます。
企業規模に関わらず、DXはどんな企業も取り組むべき課題であり、DXを進めた先には業務改善の実現にとどまらない変化と成長を実感することができるでしょう。ただ、そうはいってもどんな事に気を付け、何から手を付けたらよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、中小企業のDXの現状や課題を踏まえ、DX推進のメリットや導入ステップなどについて、企業の成功事例を交えながら解説していきます。
この記事でわかること
- 中小企業におけるDX導入の現状と課題
- 中小企業のDX導入の必要性とメリット
- 中小企業のDX導入ステップと具体的な成功事例
こんな人におすすめの記事です
- 中小企業の経営者や意思決定者
- イノベーションを推進したい管理職
- デジタルトランスフォーメーションに興味があるビジネスパーソン
目次
- 1 そもそもDXとは?
- 2 中小企業がいまDXに取り組む必要性とは?
- 3 中小企業のDXが進まないのはなぜ?
- 4 中小企業のDXで得られるメリット
- 5 中小企業のDXを成功させる具体的な流れとポイント
- 6 中小企業のDXはバックオフィス業務から取り組むのがおすすめ!
- 7 中小企業のDX成功事例
- 8 中小企業のDX成功の鍵は“スモールスタート”
そもそもDXとは?
「デジタルトランスフォーメーション」、略してDX(ディーエックス)は、デジタル技術やデータを活用し、ビジネスの変革を行なうことを指します。DXは業務効率化を図る単なる「デジタル化」にとどまるものではなく、企業風土や組織の変革を伴いながら市場競争の優位性を確立するものです。
世界はデジタルにシフトしており、日本の市場もグローバル化が進んでいます。大規模な投資ができる大企業だけがDX推進の対象ではなく、中小企業こそDX推進に取り組む必要があるのです。
中小企業がいまDXに取り組む必要性とは?
DXの概要ついては理解したものの、「いま取り組むべき理由」がまだピンとこない方もいるのではないでしょうか。ここでは4つの観点から、中小企業がDXに取り組む必要性について解説していきます。
企業も消費者もデジタル化が加速している
ウェブセミナーやリモートワークのように、場所を問わずにビジネスができる環境が一気に広まりました。消費活動においても、インターネットを通じて購入できないものは無いといっても過言ではないほど、web上で受けられるサービスは多岐にわたります。
世の中は「デジタル化が当たり前」になりつつある時代です。この流れに取り残されること、つまりデジタル化に対応できない企業となることは、市場競争の土俵に上がるレベルにすら達していないことを意味します。変化の激しい時代に対応していくためにも、DXへの取り組みは必要不可欠といえるでしょう。
導入するDXツールは高価なものだけではない
経済産業省による『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展望~』(2018年)では、レガシーシステムの存在に触れています。レガシーシステムとは複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムのことです。
DXに取り組む中の施策の一つとして、このレガシーシステムの刷新が必要な企業も多いでしょう。システムの刷新となると初期費用、開発費がかさみ、導入だけでも高額な費用が発生するというイメージが付いて回る方もいるのではないでしょうか。
しかし最近では、初期費用がかからないタイプのものや、買い切りでなくサブスク型のクラウドツールなど、スモールスタートが可能なシステムも増えてきています。全社で導入する前にまずは一部門でDXに取り組んでみる、というやり方も可能です。
DX投資促進税制の見直しにより、節税措置が延長へ
安価なDXツールも増えてきたとはいえ、DXに投資する費用が発生するのは事実です。DXにかかる費用はシステムだけに限りません。人件費や、内容によっては外部委託費も必要になるなど様々です。
DXには取り組みたいけれど費用面で二の足を踏んでしまうという企業は、経済産業省による「DX投資促進税制」による節税対策も検討しましょう。当初は令和4年度末まででしたが、延長が図られ令和6年度末までとなりました。
制度の内容は、クラウドツールの活用などの「デジタル要件」と、売上上昇の見込みなどの「企業変革要件」の条件を満たせば、3%もしくは5%の税額控除か、30%の特別償却の措置を受けられるというものです。費用面の負担が軽減できれば、DX推進に踏み切りやすくなるかもしれません。
DX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制
(『産業競争力強化法における事業適応計画について』、経済産業省、2023年12月19日、P.20)
中長期的な視点によるビジネス変革を
DXのゴールは、「デジタル技術やデータを活用したビジネス変革で市場での優位性を高めること」と先述しました。この実現はもちろん簡単なことではなく、すぐ出来るものでもありません。経営層や各部署と関わりながら、長い目で見て取り組む必要があります。
システムの導入やリソースを確保する際、コスト面や業務不可で短期的に痛みを伴う場合もあるでしょう。そのリスクを避けたいがために「DXに取り組まない」とするのではなく、業務プロセスの効率化を繰り返しながら、中長期な視点を持ってコストを把握し、計画的にDXへ取り組むとよいでしょう。
中小企業のDXが進まないのはなぜ?
それでは現状として、中小企業のDX取り組みの状況はどうなっているのでしょうか。実際のアンケート調査結果をもとに、詳しく見ていきましょう。
中小企業におけるDXの現状
独立行政法人中小企業基盤整備機構は2023年、『中小企業の DX 推進に関する調査(2023 年)』として、中小企業におけるDXの現状についてアンケート結果をまとめました。
DXの必要性
(『中小企業の DX 推進に関する調査(2023 年)』、独立行政法人中小企業基盤整備機構、2023年10月、P6)
DXに対する理解度
(『中小企業の DX 推進に関する調査(2023 年)』、独立行政法人中小企業基盤整備機構、2023年10月、P5)
DXの取組状況
(『中小企業の DX 推進に関する調査(2023 年)』、独立行政法人中小企業基盤整備機構、2023年10月、P7)
DXについて、必要性を感じている企業が71.9%あるものの、ある程度以上理解している企業は49.1%、実際に取り組んでいる企業は14.6%と少ないです。
DXの具体的な取組内容
(『中小企業の DX 推進に関する調査(2023 年)』、独立行政法人中小企業基盤整備機構、2023年10月、P10)
DXの取組内容は、デジタイゼーション(アナログ作業・アナログデータのデジタル化)やデジタライゼーション(個別の業務や製造等のプロセスのデジタル化)の範囲に該当する内容であり、本質的なDXがなされているとはいえない状況です。
2023年の中小企業のDXへの取り組みは前年度より増えてはいるものの、その進捗にはまだ鈍さがあります。中小企業のDXが進まない要因は何なのでしょうか。
中小企業におけるDXの課題
DX に取り組むに当たっての課題
(『中小企業の DX 推進に関する調査(2023 年)』、独立行政法人中小企業基盤整備機構、2023年10月、P13)
中小企業が抱えるDXの主な課題は、同アンケート調査のグラフが示すとおり「人材不足」と「予算確保の難しさ」が要因といえます。
DXにおいては人材のリソース確保は重要なポイントです。ただ、それはどの企業も一緒で、DX人材・IT人材は取り合いになっています。また、そうした人材を社内で育成しようとしても、知見がないため現実的ではないというケースも多いのが現状です。
かといって外部のリソースでまかなうとなるとコストもかさみ、システムにかかる費用も加えるとDXにかかる予算を確保できない、という状況に陥ってしまいます。この負のスパイラルが、中小企業でDXが進まない理由の背景にあるといえるでしょう。
DXは中長期的な目線でとらえることが大切です。目の前の業務や予算で場当たり的に対応するのではなく、計画性をもって臨みましょう。DXは短期で完結するものではありません。ゴールを見据えて中長期的な視点で取り組むようにすると、成功に近づきやすくなります。
中小企業のDXで得られるメリット
DXにおける課題を乗り越えDXを実現させるためにも、得られるメリットを知ることはよい道標となるでしょう。ここでは、主に次の6つのメリットを紹介していきます。
- 業務の効率化と生産性向上
- 経営に必要なデータが収集できる
- 市場優位性の高いビジネスモデル創出につながる
- テレワークやペーパーレスなどビジネスプロセスの変革が可能
- 将来的な人材確保・採用力強化につながる
- BCP対策や事業継承につながる
1.業務の効率化と生産性向上
定型業務やアナログ管理されている業務をデジタル化できれば、効率的な業務が推進され、生産性が向上します。たとえばバックオフィスでの毎月の集計や、帳票のファイリングなどをデジタル化するイメージです。
手動で行なっていた業務がデジタル化されることで、属人的なミスが減り業務の精度が上がるだけでなく、人手不足の解消にも期待できます。業務が効率化された分、作業が減り、よりクリエイティブな業務に時間を充てることができ、生産性の向上につながります。
2.経営に必要なデータが収集できる
DXはデータを活用して市場における優位性を確立することが目的です。ここで活用するデータをいかにタイムリーかつスピーディーに取り出せるかが重要になってきます。
変化が激しい時代の中、正確なデータに基づく素早い経営判断ができるかどうかが競争を勝ち抜く決め手となります。DXを進める過程でデジタル化が実現されるようになると、組織内の数字(データ)が自然と蓄積され、一元管理できるようになります。さらにはデータ分析も自動でできるようになるため、多角的な視点で密度の濃い経営判断が下せることが期待できるでしょう。
3.市場優位性の高いビジネスモデル創出につながる
DXによって市場における優位性を確立するためには、顧客から選ばれる高付加価値のビジネスモデルを創出する必要があります。「ビジネスモデルの創出」と聞くと壮大に感じ、大企業だけの話のように思えますが、中小企業や小規模事業者もデジタル技術を活用することで実現可能となります。
『中堅・中小企業等向けデジタルガバナンス・コード実践の手引き2.0(要約版)』(P.2)では、「インターネットによって対面のみではアプローチ できなかった顧客にアプローチが可能に」と述べられています。
たとえば、企業は都心の顧客だけでなく地方、さらにいえば全世界の顧客が対象になるわけです。実店舗も持つ必要はありません。DXによって、どんな企業もビジネスのチャンスを拡大できる可能性があるといえるでしょう。
4.テレワークやペーパーレスなどビジネスプロセスの変革が可能
インボイス制度や改正電帳法、働き方改革など、法改正による企業の対応が義務づけられており、取り組む優先順位も高いです。一方、テレワークやペーパーレス化のような取り組みは、期限が切られていないため後回しになりがちです。
ところがDXを進めることによって、業務のプロセスも同時に見直されるため、必然的にテレワークやペーパーレス化の実現につながります。使用するデジタルツールに法改正対応が標準機能として搭載されているものもあり、自動的に法改正の対応が実行できるケースもある点はメリットといえるでしょう。
5.将来的な人材確保・採用力強化につながる
DXにより業務プロセスの見直しが図られると、働き方にもよい影響が生まれます。従業員の働く場所を問わなくなり、働く人も自社の従業員だけでなく時短や副業で働きたい人、フリーランスなど、多様な人材とコラボレーションしながら事業を進めることが可能です。
また、インターネットやデジタル機器がある環境で育った「デジタルネイティブ」と呼ばれるミレニアル世代やZ世代は、「社内でデジタル化が進んでいるか」という点が入社の決め手の一つになるといわれています。少子高齢化が進む中、若手人材の確保・定着を左右するDXは、企業だけでなく求職者にとっても重要な位置づけとなっているのです。
6.BCP対策や事業継承につながる
地震や津波などの自然災害が発生した時、必要なデータが紙やサーバだけで保存されていた場合、どれほどのリスクがあるでしょうか。企業は事業資産の損害を最小限に留めつつ、事業の継続または早期復旧のため、BCP対策を取り決めておく必要があります。
DXによってクラウド化が進めば、必要なデータにいつでもどこからでもアクセスできるので、コア業務が停止することを防止できます。自然災害は予期せず突然起こるものです。事業を継承するために必要な情報資産は、安全安心な場所で管理しましょう。
中小企業のDXを成功させる具体的な流れとポイント
さてそれでは中小企業は、どのようにDXを進めていけばよいのでしょうか。その大枠が、経済産業省が2022年4月に取りまとめた『中堅・中小企業向けデジタルガバナンス・コード実践の手引き』で紹介されています。
DX実現に向けたプロセス(仮説:中堅・中小企業版)
(『中堅・中小企業向けデジタルガバナンス・コード実践の手引き』、経済産業省、2022年4月、P15)
このプロセスを実行しようとした場合、具体的には以下の7つのステップを踏んでいきます。
STEP①|会社として取り組む姿勢と目的を示す
自社がDXに取り組むと聞くと、たとえば各部署からこんな要望があがってくることがあります。
営業部「顧客・営業進捗管理できるツールを入れたい」
人事部「人材管理のためのHRシステムがほしい」
経理部「業界特有の業務が多いのでExcelを使い続けたい」
部署ごとに要望を実現しようとすると、システムが乱立することになりかねません。そこで会社としてどのような目的を果たすためにDXに取り組むのか、ガバナンスをきかせることがまず重要です。
STEP②|担当チームを結成する
DXに取り組む際は、担当チームを結成しましょう。情報システム部門だけで構成するのではなく、各部署からメンバーを選出すると、関連業務の理解や情報交換の機会を得られ、スムーズに進みます。
担当チームができたら、意思決定者やそれぞれの役割を明確にすることで、やるべきことが定まり連携しやすくなります。
STEP③|会社全体の業務をざっくり確認する
まずは会社の業務全体の流れを把握します。
たとえばメーカー企業を例にとると、下記のようなイメージです。
- 営業:営業部/顧客に訪問営業する。
- 組み立て:工場/受注数に応じた組み立てを行なう。
- 購買・在庫管理:工場/倉庫にある在庫の棚卸と発注を行なう。
- 販売:営業部/顧客へ納品し、請求書を送る。
- 会計:経理部/入金チェックと財経数字の管理を行なう。
業務の流れを把握することでどこに問題があるのか見当をつけることが可能になります。
またその際に、各業務の内容や何人で担当しているかなどを、ざっくり確認しておくようにしましょう。これらの情報は、どこから着手すべきか優先順位を決める際に必要になるので、できるだけ正確に把握するのがポイントです。
STEP④|最初の目標(解決する課題)を決める
DXで実現したいゴールには、いきなり辿り着くことはできません。まずはDXの対象とする業務を見極めて、目標を決めていきます。最初の目標は、短期間で成果が出やすい業務を選定するようにしましょう。DXの第一歩として実績化しやすく且つ要領をつかめるメリットがあります。また、実績を残すことで以降の予算確保にもつながるよいトピックスにもなります。
その際、使用するデジタルツールの標準機能で実現できる範囲の業務から着手するのがおすすめです。いきなりオプションも追加したものの使いこなせないという状況も起こりうるので、標準機能を使いツール活用の基礎固めを行うのがよいでしょう。
STEP⑤|決めた目標に着手する
前項で決定した最初の目標となる業務に、実際に着手していきます。たとえば、営業部の営業日報にデジタルツールを活用する場合、全員が毎日入力できているか検証します。
仮に入力できていないケースがあれば、ツールの改修が必要なのか、環境として難しいのか等、原因を確認することが大切です。思った通りにDX化が進まないからといって諦めることなく、取り掛かる業務に対して、一つずつ向き合っていくようにしましょう。
STEP⑥|運用と改善を繰り返しデータを収集する
システムを運用するようになると様々な課題が見えてきますが、これは問題ありません。システムの設計や運用環境など、改善すべきポイントを探り当てて対応し、少しずつシステムの完成度を上げていきましょう。はじめから完璧なシステムを構築しようとするのではなく、運用しながら課題の発見と改善を行うと、継続的にシステムが使われるようになります。
運用と改善には時間も労力も必要になるためシステム担当者だけでは実現できません。改めて、会社(経営層)や現場の協力が不可欠となることを全社的に理解し、一丸となって取り組むようにしましょう。
STEP⑦|収集したデータを基にさらなる課題解決や顧客体験へ反映させる
運用と改善を繰り返すことで業務のシステム化や効率化が実現されたら、次の課題に取り組みましょう。システム化によってあらゆるデータが収集しやすくなるため、おのずと次に取り組むべき課題がみえてきます。このように一つひとつステップを踏みながら課題を解決していくのがDX推進につながるのです。
DXによるメリットは社内の業務効率化だけに限りません。DXで業務のプロセスが改善されれば顧客へのサービスの質向上につながります。また、顧客の声をデータとして蓄積することで、商品の改善や次なるサービスの開発に生かすことも可能です。このようにDXが進むと顧客体験に変化を生み、その結果として顧客満足度と自社利益の両方を高めることが期待できるでしょう。
DX推進の成功ポイント
経済産業省による『中堅・中小企業向けデジタルガバナンス・コード実践の手引き』では、DXの成功のポイントを5つあげています。
気づき・きっかけと経営者のリーダーシップ【意思決定】
経営者がリーダーシップを発揮することで、ビジョン・やるべきことが明確になり、スピード感を持ってDXに取り組むことができます。また、支援者との出会い、セミナーやコミュニティからの情報収集などによっても気づきが得られるため、いかに外部視点の導入の機会を持てるかということも、重要な要素となります。
まずは身近なところから【全体構想・意識改革】
DXに取り組む企業の事例を見てみると、まずは身近なところから取り組み始めるところが多く見られます。たとえば身の回りの個別業務のデジタル化や、既にあるデータを活用してみるなどです。スモールスタートで試行錯誤してノウハウを得ながら、最終ゴールに向けて一つ一つステップアップしていくのがよいでしょう。
外部の視点・デジタル人材の確保【DX 実現プロセスの全般】
デジタル技術の活用において、その理解や知見のある人材は欠かせません。ただ、すべて自社内だけでリソースを確保しようとするのは限界があります。そこで、IT技術に長けた外部機関の支援を活用する企業が多く見られます。外部支援を通じて、社内にもノウハウやスキルを蓄えながら、人材育成にも繋げる手段を取ることも中長期的な視点として重要です。
外部支援機関の一例として、サイボウズ社が提供するクラウドサービス『kintone』を導入した企業を支援する「伴走パートナー」企業が存在します。詳細はこちらもご覧ください。
DX のプロセスを通じたビジネスモデルや組織文化の変革【DX 拡大・実現】
DXは顧客に対して新たな価値を提供するために行なうものです。組織や既存のビジネスモデルの変革プロセスで伴う「デジタル技術やデータ活用のスキルの向上」のメリットは、組織を強くするだけではありません。変化の激しい昨今でも素早く変わり続けることができ、顧客のニーズにもデジタル技術を活用しながら対応できるようになります。
中長期的な取組の推進【DX プロセス全般】
DXで新たな基幹システムを導入しただけでは、組織が簡単に変革できるわけではありません。5年後、10年後の自社はどうなっていたいかというビジョンを明確にしたうえで、業務やプロセスの把握、課題の設定、必要な人材・支援を確保し、長い時間とコストを投じながら、中長期的にじっくりと変革に取り組める企業の体力があるかということも、重要なポイントとなります。
中小企業のDXはバックオフィス業務から取り組むのがおすすめ!
DXのポイントは掴んだものの、何からDXに取り掛かればいいかわからない、という場合はまず、バックオフィス業務から取り組むことをおすすめします。その理由は次の3つです。
- 法改正対応のような期限が切られている業務が多く、早期着手が望まれる
- 入力、集計、出力等のプロセスで成立する業務が多く、適切なシステムの導入ができれば少ないITリテラシーでも効率化がはかりやすい
- 企業情報が集約されている部門のため、経営指標がリアルタイムに見え、経営判断の早期化につながる
導入するシステムが自社にマッチしているかどうかもキーポイントになるでしょう。
たとえばクラウドシステム『kintone』の場合、バックオフィス業務からそれ以降の業務でも活用できる汎用性の高さ、拡張性の高さから、30,000社以上に導入されており、検討の価値がありそうです。
中小企業のDX成功事例
ここでは中小企業がどのようにしてDXに成功したのか、実際の事例を踏まえながら解説していきます。紹介する企業の事例は「kintone」を導入し、成果が得られたものです。それでは見ていきましょう。
成功事例①|内山電設様
大口工事から小口工事、公共工事から民間工事まで幅広く請け負う内山電設株式会社様。
【課題】
・紙ベースでのデータ管理で紛失や業務遅延の支障が生じていた
・既存システムが古く、システム刷新の必要に迫られていた
【kintone導入による施策例】
職人さんが作成する紙の日報を、kintone(データ管理)に一本化。作成と同時に自社の人工(人件費)が自動集計され、リアルタイムで工事原価を出すことができるようになりました。
職人さんや事務員さんなど現場の方が入力する画面はアイコンを使用し、入力しやすいよう工夫しています(画面左半分)。反対に、経営に必要なデータは現場に見えないよう、別の見せ方で管理しています(画面右半分)。
各アプリへ入力された数字は1か所のアプリで集約値を見ることができ、データによる工事の予実管理が叶いました。なお、集計にはkintoneのプラグインである『Krew Data』を使用しています。
最終的には、各工事の原価情報を集計された一覧で確認することができます。数字の見える化が実現し、経営判断に必要なデータが入力と同時に自動的に集計されるので、オンタイムで情報を把握することができるのです。
【kintone浸透のポイント】
日報の紙を廃止しkintoneへ移行することを、経営層からのトップダウンで現場に発信したことで、会社としての取り組みである姿勢を示すことができました。
また、運用が途切れないよう「これまでのやり方から軸を崩さない」こともポイントです。データの蓄積は現場の入力があってこそなので、全く馴染みのないやり方への変更ではなくこれまでの日報のやり方を汲んだ今回のケースは理想的といえます。他にも、アプリの改善の声には応えたり、できるだけ簡単で使いやすいように作るということも、長く運用していくうえで重要な点でした。
同社はkintoneの運用に「伴走パートナー」を活用しています。技術や運用スキル面で不安な点を補ってもらったり、目先の運用ではなく中長期的な経営判断に必要な視点を踏まえた作り方・使い方のアドバイスを受け、運用に反映させていきました。
事例の詳細はこちら:【kintone導入事例】内山電設株式会社様(業種:建設業)
成功事例②|日本エンジニアリング様
設備工事・建築工事の設計、加工、施工、管理、メンテナンスをワンストップで提供する日本エンジニアリング株式会社様。kintone導入により、経費や残業時間を大幅に削減できました。
【当初の課題】
- 売上の増加に伴い、原価や売上情報の集約・集計が困難に
- 職員への適切な評価不足、残業の発生
- それらを管理する基幹システムの模索
【kintone導入による施策例】
Excelのマクロや営業管理システムを試すものの、運用には至りませんでした。総務担当者の一声により、kintone導入を決意します。
kintoneアプリ「工事台帳」をITベンダーに依頼し作成しました。工事内容や実行予算、履歴、職員の工数、労務費が一目でわかるようになります。
また、予算超過が発生する事態が続いたことをきっかけに、責任者を集め業務プロセスの洗い出しと業務フローを統一しました。これにより、kintoneで発注業務における一連のプロセス管理を構築し、適切な運用ができるようになりました。
他にも、必要最低限の入力に留めユーザー離れしない工夫や、既存機能を拡張することで報告書類の作成負荷を減らす努力など、kintoneの汎用性の高さを生かして運用を続けました。
詳細はこちらから:kintoneで建設業の実行予算を一元管理!!
【kintone導入による効果】
- 販管費:年間4,000万円削減
- 製造原価:年間4,000万円削減
- 残業時間:年間5,500時間削減
ほかにも、「社内にkintoneで開発できる人材が育成できた」「実行予算に対する従業員の意識が改善された」など、数字以外の効果も見られました。
事例の詳細はこちら:kintoneで笑顔あふれる会社に生まれ変わった日本エンジニアリング
中小企業のDX成功の鍵は“スモールスタート”
- 中小企業におけるDX導入の現状と課題
- 中小企業のDX導入の必要性とメリット
- 中小企業のDX導入ステップと具体的な成功事例
本記事では、中小企業のDXの成功に向けてこのような内容で紹介してきました。
DXは時間やコストの投資が発生する一方で、デジタル化に伴い業務の見直しがなされ、組織の文化醸成やビジネスモデル変革へと近づける非常によい機会を得られます。
まずは身近な業務で、できることからスモールスタートさせるのがDXの第一歩です。小さなことの積み重ねが大きな成長の種となります。
DXを進める中で、社内だけでは解決が難しいときや、客観的な視点を取り入れたいとき、外部の協力を得ることも重要です。プロの技術が必要と感じるお困りのことがありましたら、是非わたしたちペパコミまで、お気軽にご相談ください!
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