失敗しないためのkintone自動採番プラグインの選び方
目次
はじめに
ペパコミ株式会社でサポート担当をしている、鍋島です。
2023年8月現在、累計で200以上のお客様に対して、構築のアドバイザーや作られたkintoneに対するレビュー、一部プラグインの設定代行を行ってきています。
さて。多くの会社さんが、kintone構築初期に自動採番プラグインを導入されることと思います。
自動採番プラグインなんてどこの会社のものを使っても同じだろうなんて思われている方、調べたら無料であるのにわざわざ有料のものを買う理由なんてないだろう、など思われている方がいらっしゃるかもしれませんが、それは大きな間違いです。
僕は仕事柄、他人が作ったkintoneを見る機会が多くありますが、最近「御社で導入されている自動採番プラグインでは想定されている動きは出来ません。別の自動採番プラグインが必要です」という話をする機会が多いことに気づきました。
そこで、社内のkintone担当者向けに、仕様で選ぶ、絶対失敗しないためのkintone自動採番プラグインの選び方を解説します。
評価時に見ているポイントの解説
実務において私が紹介する自動採番プラグインを選定する際は、お客様の想定している使い方に対して、下記5つの仕様のどれを満たす必要があるのか考えて選定します。その基準を、ご説明します。
なお、モバイル対応については、対応していないプラグインだけ記載しています。現在は大半がモバイル対応しています。
1.レコードアクセス権と共存できるか
自動採番プラグインを設定したアプリにレコードのアクセス権を設定している場合、下記の例のように、4番目にAさんがレコードを登録しようとした際、AさんからはTest-003というレコードが既に存在することを調べられないため、自動採番プラグインがTest-003という既にある番号を採番しようとしてフィールドの重複禁止設定に引っかかり、レコードが保存できなくなる、という状況が発生します。
これを回避するためには、APIトークンを利用した自動採番の機能を持ったプラグインを導入する必要があります。
実例としては、社長が知人から受けた案件は価格を安くしてあるので社員には見えないようにしたいというケース、同一アプリを本店と支店など複数の拠点で使っているが支店間は相互にレコードを閲覧できないようにしたいというケース、フランチャイズビジネスをされているお客様などで遭遇します。
2.csv取り込みや外部から作られたレコードに採番可能か
自動採番プラグインについて、ぶっちぎりで多く受ける質問が、csvで取り込んだレコードに採番されないのは何故ですか?というものです。
大半の自動採番プラグインは、レコード作成画面(※編集画面ではない)で「保存」のボタンを押した瞬間に採番するようになっています。そういう仕様です。
ということは、csvから取り込んだレコード、フォームブリッジやじぶんページ、Zapier、アステリアワープ、Yoomなどにより外部から作成されたレコードでは作成画面で保存ボタンが押されていないので、自動採番は動きません。
上記のような方法で作成されたレコードに対し、何かしらの手段で採番が可能かどうかは、自動採番プラグインの性能比較を行う上で大きな差別化点になってきます。
3.年度ごとの連番リセットが可能か
自動採番でよくあるのが、「テキスト-日付-連番」という形です。
「請求-202307-003」のように連番を作ります。
この設定の連番部分を、毎日リセットする、毎月リセットする、毎年リセットする、などの設定がプラグイン側で可能ですが、ここに年度を使えるかどうか、という点も大切です。
請求書や見積書は会計年度ごとに連番をリセットしたい、という会社さんがよくありますが、プラグインによってはこの年度ごとの連番リセットができません。
7月末決算なので、8月~翌7月の間で連番を振って、翌8月になったら連番をリセットして1からカウントしていきたい……と、そんな場合に必要な機能です。
4.設定は簡単か
定量的な評価が難しいポイントではありますが、対応するお客様ごとに、理解力やスキルには差があるので、そのお客様が自分自身で扱えるプラグインか、という視点もプラグインを紹介する際は考慮に入れています。
自動採番プラグインの場合は自力で設定できないと、本来は自動採番を行うべきアプリにおいて、自動採番されたフィールドが存在しない、という状況が起きていて
関連レコードの設定方法を説明をする際、レコード番号で紐づけるとか、(重複があると承知の上で)顧客名で紐づけるとか……やらないといけない時があるんですよね……。
5.価格
必要なプラグインならお金を払うと仰るお客様もいれば、少々不便でも安くしたい、など会社ごとに方針は異なりますので、価格についても載せておきます。
自動採番プラグインいろいろ
cybozu developer networkの「自動採番プラグイン」
最初にご紹介するのは、cybozu developer networkにて無償公開されている自動採番プラグインです。
同じく無償で提供されているアディエム様の無料版と比較すると、こちらはAPIトークンの機能を使えるのでレコードのアクセス権と共存できますが、設定できる採番パターンが少なめになります。
日付設定に「年度」を使うことができない、区切り文字が「-(ハイフン)」と「_(アンダースコア)」に限定されている点で、今回ご紹介している中では、設定の自由度が最も低いプラグインとなります。
csv等で取り込んだレコードに対して採番する機能はありません。
また、cybozu developer networkにての提供で、問い合わせのハードルが少し高めなので、IT初心者には勧めにくいと感じます。
今回紹介している中で唯一、モバイル完全非対応です。スマホアプリからレコードを作成することを想定されている場合はご注意ください。
無料で使え、APIトークン対応しているのでレコードアクセス権の設定と共存できる、という点でkintoneではなくてもある程度システムを触った経験のある方がいらっしゃる会社なら、アリだと思います。
製品ページ:自動採番プラグイン
アディエム様の「自動採番プラグイン」
無償版を評価しています。
主観ですが、設定画面が最もわかりやすいので、お客様にお勧めしてきた回数が最も多いプラグインになります。
同じく無償のcybozu developer networkのものと比べると、採番リセットが「年度」に対応していて、しかも年度の始まりも選べるので、7月決算で8月から会計年度が始まるお客様などにお勧めです。
区切り文字が自由入力になっているので、/(スラッシュ)なども利用可能です。
csv等で作成されたレコードに対して採番することはできないので、注意が必要です。
APIトークン非対応なので、レコードのアクセス権を設定するアプリには使用することができません。
総合すると、外部連携でレコードを作成する予定も、レコードのアクセス権を設定する予定もない、設定は簡単な方が良い、という会社さんにオススメです。
なお、アディエム様の自動採番には高機能版というものがあります。
こちらはレコードアクセス権があっても採番可能、csvから取り込んだレコードに対して一括採番可能、ステータスやラジオボタンに応じた採番が可能、と非常に高性能です。有料版は買い切り15万円。
製品ページ:kintone 自動採番プラグイン
M-SOLUTIONS様の「自動採番プラグイン」
以前は有料版しかありませんでしたが、2023年7月より、無料版が公開されました。
無料版の場合は50ユーザーまで、かつ10アプリまで、という制限が付きます。
採番設定の自由度が非常に高い点が特徴になります。
テキスト-年度_連番【ドロップダウン】
のように、自動採番の要素同士の繋ぎをそれぞれ変更することが可能です。【】なども使えます。
無料版では先頭文字、日付やドロップダウンなど3種類の要素、連番、合計5つの要素を自由に並べることができます。
他のプラグインが基本的に「テキスト」「日付」「連番」の3つの要素しか使えないことを考えると破格の自由度。有料版ならフリー要素が6要素まで拡大し、最大8要素からなる連番を設定可能です。
ドロップダウンに連動して採番を取らせた場合、ドロップダウンの選択肢がAの場合の連番、Bの場合の連番、Cの場合の連番、と1アプリの中で連番が複数作れる機能は、後述のATTAZoo+と本プラグインのみの機能となります。
例えば案件でkintoneの001、Garoonの001、kintoneの002の様な採番をして、提案製品ごとの案件数を見たい時など便利です。
レコードのアクセス権を設定してあるアプリでも設定可能でした。
csv等で取り込んだレコードに対しては1レコードずつであれば、レコード編集画面に「採番実行」というボタンを表示し、そのボタンを押下することで採番可能です。一覧画面での一括採番はできません。
フォームブリッジ等で外部から作られるレコードが1日に数件レベルならとても便利だと思います。別システムからcsvで取り込んで日に数十件以上のレコードが作られるなら、ちょっと大変だと思います。
難点を挙げるなら、設定はご紹介している中で最も難しい点だと思います。まさか自動採番プラグインの使い方がわからなくてマニュアルを読む日が来るとは思いませんでした。
私は設定が難しくても、自分の意図通りに動くプラグインが使いたい! システムには自信あり!という方にお勧めします。逆に、私は設定が難しいのは嫌だな、という方には勧めにくいと感じました。
使用できるアプリ数、ユーザー数の制限がなくなる有料版は年額5万円。
製品ページ:kintoneプラグイン(無料版)
JBアドバンスト・テクノロジー様 ATTAZoo+の「自動採番+」
ここからは無償版がなく、有料でのみ提供されているプラグインとなります。
あったら便利でおなじみ、ATTAZoo+の自動採番プラグインです。
3000円/(30ユーザー・月)単位の課金になりますので、kintoneユーザー数によって価格が大きく変わってきます。
APIトークンの設定が可能なので、レコードアクセス権を設定するアプリでも問題なく稼働します。
csv等で登録されたレコードについては、一括採番の機能があります。別システムから毎日csvで大量のレコードを取り込むような会社さんにはお勧めです。反面、後述のジョイゾー様のプラグインと比較した時、一括採番ボタンを表示するユーザーの制御が行えない点は、会社によっては気になるかもしれません。アプリを利用できる全員に一括採番ボタンが表示されます。
設定の特筆すべき点として、ドロップダウン等に連動した採番が可能という点が挙げられます。
例えばkintoneのお客様はkで始まる連番、Garoonのお客様はgで始まる連番、など採番に含むテキスト部分を変更したい場合に使えます。
下記のような形の採番結果を得たい場合は、本プラグインまたはM-SOLUTIONS様のプラグインが必要です。この形の採番を行いたい会社さんにはほぼ無条件でATTAZooを勧めています。
なお、モバイル対応が必要な場合、エントリーではなくスタンダード以上のプランでの契約が必要になりますので、この点、ご注意ください。
製品ページ:ATTAZoo+
ジョイゾー様の「自動採番プラグイン」
ジョイゾー様の自動採番プラグイン、単独であれば3000円/月ですが、他の有料プラグインもセットで使う場合は、3つで6000円/月 などのプランも用意されています。
※追記:2023/10/1以降、3900円/月への価格改定が行われます。
このプラグインもAPIトークン利用可能なので、レコードアクセス権との共存が可能です。
csvで登録されたレコードについては、ATTAZooと同じく一括採番が可能ですが、この一括採番が可能なユーザーをユーザー単位、組織単位、グループ単位で設定可能です。
フォームブリッジやZapier等で外部から作成されたレコードについては、レコード編集時に採番対象フィールドが空欄の場合、自動で採番してくれる機能があります。レコード編集画面で採番対象フィールドが空欄の場合に自動で採番する機能は、本プラグインのみの機能です。
その他の特徴としては、自動採番が複数のフィールドに設定できる点と、レコードが特定の条件を満たした時に採番する設定が可能な点が挙げられます。
例えば電話問い合わせを受けたあと担当者から折り返しの連絡等を行い、その結果としてチェックボックスで「成約」にチェックが入ったとか、ドロップダウンで「成約」が選ばれたとか、そうした動作をトリガーとした自動採番が可能です。
テーブルに対して自動採番を行う機能で、テーブルに行番号を付与することができたり、複数のフィールドに対する自動採番が可能であったり、他社と差別化される機能が多い印象です。
固有の特徴が非常に多いので、機能面で選ぶことが多いプラグインだと思います。
製品ページ:自動採番プラグイン
まとめ
ここまでの内容を、表にしてみました。
表に書ききれない部分は、各プラグインの項目に書いていますので、そちらも参考にお願いします。
自動採番プラグインもメーカーによってそれぞれ仕様が違っていることがわかります。
なので、価格が安いという理由で選ばず、機能で選定するようにしてください。
終わりに
今回は自動採番にフォーカスした記事を書かせていただきました。
たかが自動採番、されど自動採番。見るべきポイントがたくさんあることが伝わりましたなら幸いです。
とはいえ、現実的に、こうしたプラグインの検証を社内担当者の方が自力で行うのは、時間的にもかなり厳しいと思います。
伴走パートナーにご相談いただければ、こうした知識に基づいたアドバイスが行えますので、ぜひ探してみられてください。
私としては、その中で伴走ナビを選んでいただけると、とても嬉しく思います。
それでは、よいkintoneライフを。
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